男子生徒の告白を、女子生徒は身動ぎもせずに聞いていた。 彼女の心はとても凪いでいた。まるで、嵐の前の静けさを連想させるほどに、ぴたりと。 「すきって……なに?」 男子生徒が言葉を切ってから1分後、沈黙を破ったのは女子生徒の乾いた言葉だった。 懐かしむ ‐Missing‐ 首を傾げた女子生徒にどう返すのが正解かと思索し始めた男子生徒のそれは、徒労に終わった。 女子生徒が一言付け足したからだ。 「それは、圭(けい)くんが、わたしを好きってことだよね?」 「はい」 「そっか……」 予想していた反応とは懸け離れた彼女の様子に、彼のほうが身動ぎしてしまった。ロマンチストとして有名な先輩だったため、もっと、赤くなったり部室から逃げ出したり、そんなことをするのではないかと身構えていたのだ。 しかし、彼女は思い悩むようにして視線をふらふら彷徨わせていた。時間をくださいと言われる気でいたのもあって、男子生徒は、もしかして今すぐ返事をくれるのかなあとか、そんな自分に都合の良いことを頭に浮かべる。 「圭くん」 「はい」 「わたしの、どんなところが、好き?」 「え」 ぼわ、顔から火が噴き出したように感じた。熱い。恥ずかしい。そんなことを聞く先輩が可愛い。色々なことが一瞬で脳内を一巡りして、男子生徒は少し落ち着いた。 彼女は興味深そうに、そんな彼を見ていた。 「えっと」 「うん」 「ベースに一生懸命なところとか」 あまり変化のない笑顔にたじろぎながら、ぼそりと答えていく。 「俺の入部、一番に喜んでくれましたし、友達思いだし、ぽわぽわしてるところもなんですけど」 ああ、俺は何てことを言ってるんだろう。そう思ってはいても、彼女のまなざしに応えることだけを考えて彼は続けた。 「……全部、可愛いくて、そこが好きです」 頭の悪そうなまとめ方だなあと照れ笑い。 「そうだよね。すきって、そういうものだよね」 しかし、彼女のほうは彼とまったく反対の表情をしていた。ぼろりと、透明な滴が頬を伝って木の机に落ちた。男子生徒には何が引き金となったのか分からないまま、彼女はそのままボロボロ泣き出した。止めどなく流れる涙に、彼は慌てた。 「先輩? どうしたんですか。俺が何かまずいこと言いましたか?」 「ううん……違うよ。埋め合わせ、してるの」 「埋め合わせ?」 男子生徒はますます訳が分からず、ついに言葉も発せないほど泣きじゃくり始めた女子生徒を見ていることしかできなかった。 あの大切な感情を、 top |