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 窓のそば、日当たりのいい席で頬杖を突いてぼんやりとしていたブレザーの男子生徒が、不意に立ち上がった。ガタン、動作に合わせて椅子が鳴る。

 同じ部屋にいた女子生徒がそちらを見る。こちらの彼女もブレザーだ。

「先輩」

「なあに?」

「……俺、好きな人ができました」



 がれる ‐Longing‐



 それは昨年の話なのだけれど、部員5人の軽音楽部は、顧問の定年と共に廃部することになっていた。高校に入学したばかりの男子生徒は、そんな事実を知っていながら入部届を出し、部員を驚かせた。部長である女子生徒に何度も再検討の勧められたが、彼は頑としてそれを聞かず、結局、新入部員として歓迎されることとなった。

 3年生が2人、2年生が3人。すべて女子だ。そして1年生が1人。

 経験者ではなかったものの、彼は物覚えが良く、夏にはそれなりの弾き手になっていた。熱心だったせいでもある。

 国公立大学に進むと決めていた2人の3年生はとうに引退し、2学期の学園祭では部員4人でステージを盛り上げるため、必死だった。そこで彼は心に違和を感じ、それが世間一般で言う『恋』なのではないかと思うことになる。

 相手は2年生の女子生徒の一人で、副部長。寒風の吹き付ける終業式の日、告白に至った。

 返事は、ノー。



 + + +



 季節は巡り、軽音楽部は新入部員の希望を断って、5月を迎えた。3年生である女子部員たちは引退するころだったのだが、1人、私立大学に行くからまだ残るよ、と言ったのが元部長の彼女。

 ちょいちょいとベースのチューニングをしていたところから、冒頭に戻る。

「半年かあ。元気になって良かったよ」

 可愛い後輩からの報告に顔を綻ばせた彼女は、一旦チューニングを中止して、手近にあった椅子をずりずり引きずり、男子生徒のそばに置いた。彼を座るよう促し、自分もそこへ腰掛ける。

「おめでとう」

「……ありがとうございます。それで、あの」

「また相談? いいよ、乗ってあげる。女の子の気持ちなら多分、わかるし」

 にこー、微笑んだ彼女を見つめた彼は、しばらく口をパクパクさせていた。まるで金魚みたいだ、女子生徒がそんなことを考えてクスクス笑っていると、ごくり、生唾でも飲み込む音がして。


「先輩が、すき、です」



 焦が、れる?


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