出来た痣を見る度に一瞬にしてあの日々を思い出してしまうのは誠に不本意ではあるのだが、其程までに自分にとって中学時代と云うものは、言い換えてしまえばシニアに所属していた、ハッキリと言ってしまうとあの投手とバッテリーとして過ごした日々は、良い意味でも悪い意味でも俺の心に深く爪痕を残して行きやがったらしい。残すだけ残して、何時までも先へ行ってしまうひと。年齢差と云うどうしようも無い壁は如何なる場面でも良い方向に転がった試しが無い。同じ学年に生まれていれば、出逢うのがもっと前だったら、幾度恨み悔いたのか知れない。少なくとも幾らかは年齢だけでなく身体も精神も大きくなった現在、第三者的視点に近い位置で見ることが可能になった分、嫌と云う程に当時の力不足を痛感してしまい溜息は止まる気配を見せない。
何れだけ口先で貶す事が出来たって感情を隠したって威勢を張ったって、悔しいくらいに憧れているたった一人、あのひとに認めて貰いたい気持ちはきっとあの頃から何一つ変わっていないんだ。餓鬼なりに本気だったから、本気だから、其れだけに追い付けないあのひとが憎らしくて疎ましくて大嫌いで。死ぬ程近付きたいと思う唯一無二の存在であるのだと認められたのはつい最近であったりする。例えば周りが一つ熟したとして、そうなれば勿論負けず嫌いと自負している自分の性格上二つを熟す訳なのだが、そのときあのひとはというと熟しているのは数字で無かったりするのだから全くどうして。並大抵じゃない等と周りの大人達は囃し立てるが、違うのだ、意識というかスキルというか何もかもが。そう評価してしまうのはフィルター付きの目線であるからだと分かってはいるのだが。それでも、一枚皮を剥がしてしまえば只の十六、七の一男子高校生だと気付かないふりをしているのはまさか己の自尊心を守る為他ならないだなんて、全く嫌気が指す。

「、くだらねえ」

何が成長した、だよ。今だって何も変わってない餓鬼じゃねえか。決して広くは無い背中に追い付けない言い訳にしてるだけなんだ。確かに武蔵野第一高校という場所でのエースではあるのかもしれないけれど、完全無敵のスーパーマンなんかじゃないんだ。それなのに、それなのに、ああもう。自分自身に吐き付けてやった。
もうこの先バッテリーとして組むことはきっと無いだろう、当然のことにぼんやり思考を巡らせつつ、今はもう叶わない事が当たり前だった当時をほんの少しだけ羨ましく思ってしまった。なあ元希さん、どうやったらあんたを越えられる?





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敵対心と羨望にぐるぐるする
タカヤくんいいと思います。

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