違和感を感じた。それはまるで喉に何か詰まらせてしまった様な、心配事があって胸が酷く重く感じる様な、上手く表現出来ないくらいに只ひたすらに違和感があるのだ。何だろう、何が足りないんだろう、何が余ってるんだろう、思考までもがぐるぐるぐるぐる、回ったところで答えは出ないままで。ぼす、と枕に頭を埋めてみても変わる筈もなく、寝れば忘れるかなんて思ったものの気になって睡眠どころじゃない。いつもなら考える間も無く睡魔が襲い掛かって来るのにどうして今日に限って。学校もいつも通りだったし部活でも調子良かったし夕飯はカレーだったから三杯も食べたしオナニーだって一回だけだけどついさっきした。宿題、はいつもやってねえしな、花井に借りた英語の教科書だって七組が授業の前の休み時間にちゃんと、あ。

「花井に触ってねえ…!」

思わずがばっと起き上がってしまった。そうだそうだ、たまたま、本当にたまたまだけど、今日は一度も花井の肌に触れてなかった。教科書の貸し借りは急いでいたし、部活中は何かと組むメニューがあった筈なのに見事に同じ組にならなくて、帰りには部長副部長の三人がモモカンに呼ばれて話していた。恋人として触れるという行為愚か、行動としての触れる、さえ出来なかったのだ。そして、違和感の理由は間違いなくそれだけらしい。
判明した途端に力が抜けて、流石に自分に対して呆れてしまった。たった二十四時間、プラス数時間、触れていないだけでこんなにも身体的な支障を来してしまうものなのか。会って無いならまだ分かるけどさあ。自分ですら笑ってしまうのだから、花井に言ったらほとほと呆れられてしまうんだろう。それか怒鳴るかもな、くっだらねえこと言ってんじゃねえよ、なんて顔真っ赤にしながら。花井のリアクションて分かりやすくておもしれーんだよな、ホント、すき、すきだよ、花井、ねえ。

「会いたい、なー」

一人きりの部屋では怒鳴り声も呆れた溜息も聞くことは無い。嗚呼、オレは此程までに、
静寂に着信音はよく響くもので、突然に鳴り出した携帯電話を反射的に開けば受信完了の文字。花井梓、無題、まだ起きてるか?遅くに悪い。
瞳が輝くのを感じた。
なんだ、なんだ、なんだ。花井だって同じなんだ。オレが馬鹿みたいに花井のこと好きなように花井だって馬鹿みたいにオレのこと好きだったんだ。一人でへこんじゃって損した。絵文字顔文字が無くたって、たった二文だって、どんな顔して花井がこのメール打ったかなんて手に取るように分かってしまう程度には惚れ込んでるもんね!!!
電話帳を開き迷わず一人の名を。声で、脳で、身体で、幾度も呼んだその名の元へ。コール音はきっちり二回。又、愛しくなる。
ほら、態とらしく怠そうな声なんか出しちゃって。文字で分かるんだから声で分からない筈無いだろ、花井の気持ちくらい。すうと息を吸い込み一気に、好きだあ、って気持ち、今以上に伝わりますように。

「愛してるぜダーリンッ!」

はあ、スッキリした。





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もう田島様はスキスキ言っててくれればいいよ

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