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from 榛名 元希
sub 無題
text いーかげん帰って来い!

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数時間振りに取ったコミュニケーションは実に淡白な物で、いかに奴が自己中心的、俺様気質であるかが一目で明らかになっている物で。既に充分に深くなっている筈の己の眉間の皺はより一層深くなり。ごめんもねーのかよ、舌打ちは冷た過ぎる空気に微かな音だけしか残せずに、少し罅入った唇が鋭く痛んだだけだった。
元々の理由なんてもう今となっては然程大したものでは無かった様な気もするが、そんな事よりも重要なのは今現在奴の態度が俺を苛立たせている事なのだ。こんなクソみたいなメール一通でハイハイなんて許してやるもんか。どうやら奴には俺の帰る場所は其処しか無いんだという絶対的な自信があるらしいが、そんな簡単に帰ってなんかやる訳が無い。大体何だよ、いーかげん、帰って来いって。俺はテメェの弟でもペットでもねぇんだからな。もしも送られてきた文面が、俺が悪かったですごめんなさい帰って来て下さいお願いしますだとしたら許してやろうかと少しくらい考えてやっても良かったのだが。
くそ、着込んで来れば良かった。こう何時間も大した防寒もしていない身体を外に晒していると、芯から冷えて仕方無い。何処か適当に店に入ろうにも生憎持ち合わせが無い。勢いのまま飛び出してしまった数時間前の自分自身を少しだけ悔いた。缶コーヒー一本買う事の出来ない現状に出来ることは既に殆ど感覚の無くなった指先を擦り、鼻水を啜りながら自らの吐く白い息で僅かな時間暖かいのだと誤魔化す事だけだ。何だか酷く惨めに感じ少し泣きたくなった。幸い、普段子供達とその母親達で賑わっているこの公園もこの時間帯では誰一人見当たらない。いっそ泣いてしまおうか、鼻の先からツンと混み上がって来た時、足元に影が浮かんだ。

「おい」
「…………」
「隆也、」
「…………」
「わりかったって」
「…………」
「帰ろーぜ」

顔は上げなかった。差し出された自分よりは熱を持っている右手を掴んだのはあくまでも寒かったからであって家に帰りたかったからであって、決してこいつを許してもいいと思ったからとか探し廻って息が切れているらしいことがほんの少しだけ嬉しかったからとかそんな事は決して、決して無い。暖かい家に帰ったら無視してやるんだ。土下座させてやるんだ。だから、取り敢えず今だけはこいつの思い通りにさせてやってもいいかな。なんて。

「つめってーな、おまえン手!」
「、アンタのせいだろッ」
「そーかそーかあ、俺のせいかー」

何故かやけに嬉しそうな顔が気に喰わない。その笑顔の前では如何なる決意も簡単に崩れ落ちてしまう俺も、又。其程までに屈託無く笑う姿は輝いていて。どうしようも無く暖かい気持ちが込み上げて来て居るのだけれど一体どうしたら良いんですか。
ゆるす、ぽそりと呟いた言葉がどうか聞こえませんように。





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喧嘩ップルなハルアベ
タイトルは逆睫様より

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