はーないはーないはーないー!きょーはなーんのひでしょーうか?

あ?何かあったか?

な……。サイテーだ花井!コイビトの誕生日も覚えてないのかよッ!

ばあか。嘘だよ、そんくらいちゃんと覚えてるっつうの

…ほんとに?

ほんとほんと

そんなら、ん!

なんだその手は

プレゼント!覚えててくれたんでしょ?

…やっぱそーくるよな……

あーほら、やっぱり忘れてたんだろ!花井のバカ!バカバカバカバカバカバカ!

ちげーって!……その…だから…。

…なんだよ

きょ…、今日はおまえがしてほしいこと何でもゆーこと聞いてやるッ

ほっ…ほんとにー!!!花井だいすきー!!!!!

い、1個だけだかんな!

はーい!んじゃねえ…………

…まじかよ

まじ!ほらはーやくはーやく

早くしろと急かす彼は紛れも無く今日の主役。世界は十月十六日本日、彼を中心にして廻っていると云う。午前零時を過ぎてから一体何人の人間が彼に祝福の言葉や物を贈ったのかは知らないが、一ヶ月余り前からこの日の事を考えていた人間は恐らく自分だけであろう。同性の同級生と謂えど、タイプが正反対と言っても過言では無い程に野球以外の共通点が見付からない俺と田島だ。何が欲しいなんて見当も付かないのには若干肩を落としたが。結論を言えば、金も無い一男子高生が恋人の誕生日に散々悩んだ挙げ句に選んだのは、つい先日無くしたと騒いでいた代わりになればと急遽閃いた携帯ストラップで、元気な彼を連想させるビタミンカラーのシンプルなデザインの物だった。只、やはり周囲の友人より照れ屋である事を自覚している程度にはそういうタチであるので、ハイおめでとうとナチュラルに渡せる筈も何か恋人らしい気の利いた台詞を言える筈も無く、現在の状況に至るのである。
頼まれた「お願い」は予想していなかった物で、もっとこう、食いもんとかさ、そういう感じかと思ってただけにプラスアルファで赤面。くそ、こいつもしかして俺の恥ずかしがる様を面白がろうとしてわざと、馬鹿な考えは目の前にあるキラキラとした瞳に掻き消され、誤魔化しの溜息の後、すうと少し冷たくなり始めた空気を吸い込み、ええい言ってやれと半ば自棄に叫んでやった。

「〜愛してんぞ悠一郎ッ!」

抱き付いた田島からは柑橘の薫りがしました。





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遅れましたがたじ誕祝い
田島様だいすきです!!!

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