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次の日も、そのまた次の日も、昼休みには清水が現れて、放課後には田口は議員の集まりに行ってしまう。

仕方ない―――、そう頭では納得しているのに。

考えとは裏腹に、気持ちは沈むばかり。

こんなん俺じゃねーよ!と、一人つっこみした所で、なにも変わらない。

田口と過ごす時間は減る一方。

それに対して田口は何度も、何回も、毎回謝ってくれる。

それが何故かいらだって、

清水と一緒に話す姿にもいらだって、

( また笑った… )

俺に向けて欲しい笑顔が、清水に向いているのにもいらだった。





日曜日、田口と遊びたいなと思いメールをした。
だけど返事は『用事があるから』とのこと。
やっぱり『ごめんね』の一言もついてきた。

まあ、仕方ない。
そう自分で割りきった。

「あー天気悪いし、ビデオ借りよっかなー」

昼にしては暗い、嫌な天気。
母さんに傘を持っていけ、と渡され、傘、財布、携帯電話を手に外へ出た。



何個かビデオを借りて家に帰ろうとしたら、外では雨が降っていた。

傘持ってきといてよかった、と内心ほっとし外を出て数分。

見覚えのある姿、清水がいた。
向かいの道路にいる彼は、誰かと話していた。

まあ知り合いでも何でもない、そう思い歩こうとした時だった。


( え―――…? )


見間違えた?
いや、見間違うなどありえない。
でも見間違えであってほしい―――…

色々頭で回想したが、紛れもなく田口の姿があった。

こちらには気付いていないようで、楽しそうに笑っていた。
…ご丁寧に相合い傘までして。




家へ帰り、直ぐ様ベッドに寝転んだ。
雨で服が少し濡れていて気持ち悪さもあったけど、今はどうでも良かった。

それよりも、先ほど見た2人の姿が頭から離れなかった。


用事がある、って清水と会うこと?

何で相合い傘して笑ってんの?







俺のこと、

好きじゃないの―――…?












「安部おはよ。昨日寝てたの?」

次の日の朝一番、田口が俺の席までやってきた。

田口が聞きたいのは、メールのことだった。

俺が家に帰ってからメールが来ていた。

『今日はごめんね。また埋め合わせするから』

そんな内容。

一見すれば普通の内容だが、昨日の事を隠しているような気がして無性に腹が立ち、あえて無視した。

「…メール返して欲しかった?」

「え…?あ、うん。まあその…」

やっぱ付き合ってるし…

そう小さい声で告げた田口。
顔を赤らめ俯くその姿に、前までの自分なら、「可愛いー!」と撫でまくっていただろうが、今の自分は完全に冷めきっていた。





「…なら、何で違う男と遊んでんの?」

「え―――…?」

低く、いつもなら出さないような声を無意識に出してたようで、田口は咄嗟に顔を上げた。
多分田口の目には、いつもと違う俺が写っていたのかもしれない。
怯えた様子だった。


「昨日、清水といたんだろ?」

「あ…」

「俺との約束断ってまで、他人とデート?…いいね、楽しそうで」

「ちが…っ!それは―――…」

キーンコーン……


タイミングが良いのか悪いのか、チャイムがなり担任が来て、席に着く羽目になった。

結局田口は言い訳ができず、青ざめた顔で席に戻る。


少し嫌な言い方したよな、と反省するなか、それでもモヤモヤして、何がなんだか解らない。

結局授業の内容は1つも頭に入らなかった。



昼休み、いつもはチャイムが鳴った後すぐに田口の席へ向かうが今日は自分の席でお弁当を広げた。

田口はおろおろした様子だったが、無視を決めて、そのまま食べ続けた。

「田口!」

聞きたくもない、姿も見たくない、あの清水がやってきた。

何か話した後、田口はお弁当箱を持って、清水に着いていってしまった。

それを見ていた俺に、回りの男子が、「安部ふられてやんのー」と冗談めいて話していたので無理矢理笑顔を作った。

誰も俺らが付き合っていることはしらないが、仲が良いのは知っている。
それを冗談で、おもしろおかしく話しているが俺は本心から笑えなかった。


何で田口当たってしまうんだろう。

何で清水と一緒にいる田口が嫌になるんだろう。

田口のこと好きなのに、嫌いだ。








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