明けまして…(春組all+月子)
「名前ちゃん、そんな、酷い」
「月子、ごめん。でも私、これだけは譲れないの」
「……っ、そこは……!」
「ふふ、そこは避けれないでしょう」
「名前ちゃん……!」
「錫也は私が守ってみせる。これが私の意地だから!」
「私だって、哉太を守っ――きゃっ!」
「もらったぁーー!!」
「……はい、羊。お願いします」
「Oui、任せて」
私から墨と筆を受け取った羊は、暴れる哉太に近付く。哉太は錫也に後ろから羽交い締めで抑えつけられ、
「ばっ、ちょ、やめろ。つか、何で俺が顔に墨――羊、やめろそれこっちに向け――うわぁぁぁあああーーーー!!」
容赦なく顔に大きく墨でバッテンを描かれた。
「いやー、楽しいね。羽根突き」
正月での運動不足解消のため、近くの公園で羽根突きをしていた。羊が女の子の顔(特に月子。おいおい……)に墨なんて、と抗議してきた。なので、私が羽根を落としたら、錫也が、月子だったら哉太が墨を塗ることになったのだ。
私は今のところ、5勝0敗。
「日本にはこんなに楽しい遊びがあったんだね。ね、もう1回描いても良いの?」
「ダメだよ羊君。1回落としたら1回描くルールなの。……ごめんね哉太。私が名前ちゃんに負けてばかりで顔が……、っふふ……」
月子が申し訳なさそうに哉太へ謝る。が、顔が真っ黒な哉太が面白いのか吹き出してしまった。
「おい月子、人の顔こんなにして笑うなよ!」
「でも哉太の今の顔、誰が見ても笑えるぞ?」
「錫也も笑うなっ」
「似合うよ哉太」
「羊、てめっ!」
「はいはい、喧嘩するなら羽根突きでやりなさい」
錫也の鶴の一声により、2人は羽子板を構え、勝負を始めた。
「高校生になってもやっぱり、こういう遊びって楽しいね」
「そうだね、月子。これ終わったらカルタでもやろっか」
「うん!」
また来年もやろう、と私達が笑うと、羊、哉太、錫也の3人も照れたように笑っていた。
ちなみに哉太の墨は公園の水道で洗っても取れなくて、家に帰るまでの間、近所の人に見られて笑われていた。
Fin
20110104
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