スキキライ


いつからこうなったんだ?
考え始めたら止まらなくなってしまった思考回路に眉間の皺が深くなる。
『好きだよ』
まるで魔法でもかけられたように頭の中でずっと繰り返される。
”絶対好きなんかじゃない!”
でも嫌いだっていうたびにどこかズキズキする胸に納得できないままだ。
『好きだよ、鮎沢』
たまに暴走するアイツも、たまに優しいアイツも変わらずに口にするその言葉。
からかわれてると思っていたのに、いつのまにかからかいでもいいからその言葉を望んでいる自分がいて、でもいざ言われてみると動揺してしまって思ってもいない言葉を吐き出す口に溜息。

気付いたときには育っていた。
知らないところで根を張り、葉を広げ、ぐんぐん伸びていたその先の蕾が膨らんだ頃ようやく気付いた。
そうしていたらあっという間に花開いて、その甘い匂いにくらくらした。
そうなってしまった時にはもう止まれなくなった。
感情メーター、振り切った針はスキだと告げていた。
分からないフリをしたかったけど、そうしてみたところで頭の中からアイツが出て行くことはなくて。
アホだし変態だし宇宙人だし…否定をしたいはずなのに考えてみれば考えてみるほどアイツの色に染まっていく。

さくらを見ていたら、こういうものはもっと甘酸っぱくてふわふわしてるものだと思ってた。
でも実際、苦しいまでに胸を締め付けられて、行く場をなくした感情が拗ねているようだった。
正直に言ってしまおうか、…何度そう考えただろうか。
複雑なこと考えたら、それは正しくないのかもしれないって思ってる。
でももうどうすることも出来ない。
それくらい甘い毒を孕んで花は開いた。

「好きだよ」

温かい腕に包まれて、撫でるように吹いた優しい風が現実へと意識を連れ戻した。
「さっきからそればっかりだな」
「だって、鮎沢が遠くばっかり見てるから」
校庭を歩く人影は疎らで、傾いた夕日が時間の経過を告げていた。
「どうしてだろうな」
「何が?」
耳元で囁かれてくすぐったさに目を細めると、つられるように口角が上がった。
「いや…、秘密」
「…いじめられたいんだ?」
きっとにやけてるんだろうなって声色で分かるくらい、今の私はこいつのこと

「好きなんだよなー…」

「……知ってるよ」

少し上がった体温は私?それとも君?
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