kiss me?


それは突然。
ペンが走る音だけが響く生徒会室で、彼女を見ていたら止められない感情が芽生えた。
まぁこれもいつものことかと自分を笑いながら彼女に近付く。
此方の気配に気付いた彼女は眉根を寄せながらペンを止めると、怪訝そうにこちらを見上げる

その彼女の顔を包むように右手で頬に触れる。
指先でつい、と彼女の唇をなぞればそれは戸惑いを空気に含ませながら小さく動いた。
言葉で求めるより早く、体が動き出しそう。

でも、焦りは禁物。

「したい」

無音に落とした熱を持った願望。
彼女は勢いよく視線を逸らすと、彼女の瞳の奥に燃える俺と同じ炎を隠すかのように目を伏せた。

「…何をだ」

絞り出した声は微かに震えていた。
それは理性が本能を押し込めているから?
それとも見透かされた心に動揺しているから?

「さっきから見てるのに気がつかないの?」
「だから何をだ」

きっと彼女も気付いてる。
気付かない振りをしてるだけ。
その証拠と言わんばかりにみるみるうちに朱を帯びる頬を見ると自分の口元が緩んでしまう。

「唇」

視線を絡めるように彼女の頬を包む手に小さく力を込めた。
不安げに見つめる瞳の奥、ようやく映った自分の姿に安堵。

「ねぇ美咲ちゃん」

薄く開いた唇に触れるか触れないか。
吐息を感じるくらいに見つめ合って名を呼べば、瞳の奥の炎が揺らいで、一回り大きくなる。
後少し、後少し。

「キスして?」

見開かれた眼に宿るのは炎と、それを隠そうとする理性という氷。
その氷を掌の熱でゆっくり溶かしていけば揺らぐ心が露わになっていく。

後、少し。

ふいに強くネクタイを引かれると、刹那。

唇から伝わる微かな熱に誰かの心臓の音が鳴り響いた。
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