一緒に生きる 
 


一族を皆殺しにし、一人里を抜けたイタチを追いかけたのは今日のような月の無い夜のことだった。


またね、と言って手を振って別れたあとに
来るはずの朝は来なかった。


代わりに、カカシさんが家に来て
うちは一族がみな殺されたと知らされたその時、イタチは生きてるのだろうとどこかで確信しながらも

「イタチもですか。」

と、震えた声で聞き返したことを今も鮮明に覚えている。


その問いに、カカシさんはイタチは生きていると答えてくれた。
それに安堵する反面、それを意味することがわかってしまい、どこにいるのか。という問いかけはできなかった。


その後は、何となく日々は過ぎていった。


そうして今日のように空を見上げていたら、
月も無く、街の光すら吸い込んでしまうような暗い空に、今なら誰にも見つからずにイタチを追いかけられるかもしれないと、そう思った時には脚が動いていた。



「あまり外に出ていると冷えるぞ。」


振り返ると、そこには先程まで想っていた愛しい人。

鬼鮫はイタチのことを闇に溶け込みそうと揶揄していたけど、私には夜空から溢れてきたような、そんな精霊じみたもののように感じるのだ。


「考え事か。」

「考え事というより、思い出してたかな。」


イタチが静かに隣に座る。
何を。と言葉にしなくとも聞こえた。


「今日みたいな月の無い日に、イタチを追いかけたの。
人に見つかりにくそうだなぁって思って。」

「…、随分と行き当たりばったりだな。」


最初の空白に、彼の謝罪が聞こえた。
彼は耐えたのだ。私が二度とそのことで謝るなと言ったから。


「逆に準備なんてしてたらカカシさん辺りに見つかっちゃってたかもね。
結果オーライってやつ。」

「確かに、カカシさんは目敏いからな。」


ふ、と彼が口元に柔らかく笑みを零す。


「でもほんと、誰にも捕まらなくて良かった。
捕まってたら、イタチと二度と会えなかったんだもん。」

ことん、と隣のイタチの肩に頭を預ける。
ほんの少し手を伸ばせばイタチに触れられるこの距離が、ただ愛おしい。


「そうだな。
お陰でお前を捕まえることができた。」

「イタチがあたしを?
どっちかというと、あたしがイタチにくっついてる気がするんだけどなぁ。」


あはは、と笑っているとそっと左手を取られる。
イタチの体温が心地良くて、特に気にすることもなく遠くの夜空を見る。


「これでも、捕まってないと?」


スッと掲げられた左手。
その薬指にはきらりと輝く星と思えるようなシルバーリングが。


「え、え?!いつの間につけてたの?!」

「ついさっき。まさか気付かないと思わなかった。」


確かに、何かしてるなと思ったけども気にして見るほどの何かではなかった。


「えと、あの、これは…ただの指輪、じゃないよね?」


恐る恐る尋ねる。
暁で支給されてる指輪かと、茶化してみようと思ったけどイタチの目を見てやめた。



「…本当は、こんな風にお前を縛るつもりはなかった。
俺は罪人だ、余命も僅かだ。

だけど、それでも、お前と共に生きたい。
お前と共に生きる証が欲しいと、望んでしまった。

なまえ、俺と生きてくれないか。」


心臓が、キュッと結ばれたようだった。
あぁ、あぁ、私は本当に、あの時の私は見事正しい選択を出来ていたのだ。


あの夜じゃなきゃ駄目だった。
あの夜に決めたからこそ、この未来に繋がった。


「…っ、はい、わたしで、良ければ。」


幸せに押し潰されそうな言葉を、何とか絞り出して答えた。
涙できらきらと、星の様に輝く愛しい人。


例え一緒にいられる時間が短くとも、そんなの関係ない。
少しの時間も無駄にする気なんてさらさらない。


愛しい愛しい人。


その愛は、また新たな愛を育んだ。






「…。」

「聞こえる?」



普段見下げることのないイタチの頭は、私のお腹に添えられている。
黒い瞳は、柔らかな睫毛の下に隠れている。


「あぁ、小さい鼓動が、しっかり。」


自分の身体のことだけど、イタチにそう言ってもらえると、ちゃんと育っているのだと安堵する。


「ふふ、女の子かな、どっちだろう。」

「男の子、だと思う。」

「あら、そんなに元気に動いてる?」

「いや、静かだが…何となく。
何となく、そう思うだけだ。」


夜に輝くような人だと思っていたけれど
今はその眼差しは、日向のようにあたたかい。


あぁ早く、この人に会わせてあげたい。
その手に抱かせてあげたい。
きっと見たことのないような顔で、この子を見るに違いない。


「ゆっくりでいい。
しっかりと、母さんの中で大きくなるんだぞ。」

「…、そうね。
ちゃんと、お母さん頑張るからね。」


その言葉の後に、そっと、でもギュっとイタチに抱きしめられた。

謝れない、代わりの抱擁。
私も抱きしめ返して受け入れる。


大丈夫。
貴方は私に沢山の想いを遺してくれるから
だから私は大丈夫。

生まれてくるこの子には、貴方の話を沢山聞かせるの。
話せば話すほどに、貴方のカタチはこの子の中で鮮明になる。
忘れないように、私が貴方を拾い集める。
だから…



「イタチ、今日は沢山話しをしましょうね。」



これからも、貴方と生きていく為に。























−−あとがき

もう本当に…本当に遅くなってゴメンなさい…
そして全然期待通りに書けてない気がすっごくします。
最初は生存ifで、幸せ家族の計画をしてたのですが…完全に計画崩れました。
イタチパパ見たかったのにおかしい。
普通にシリアスになりました…精進します_| ̄|○

完成が遅くなった上、こんな出来ですが見て頂けると幸いです…!
リクエストも頂きありがとうございました(〃ω〃)



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