▼ ゲーセン
休みの日に部活が終わった後は、必ずゲーセンに行く。
家から歩いて十分くらいの駅前にはゲーセンがたくさんあって、毎週通っても飽きない。
やるのは主に格ゲー。
そしてゲーセンに行くときは、いつも一人か部活の先輩と一緒。
同じタイミングで偶然同じゲーム機にいた奴や先輩と対戦することが多いけど、今まで負けなし。
このあたりのゲーセンじゃ、ちょっとした有名人だ。
全国ランキングにもスコアが載ってるし、格ゲーはやっぱり好きだ。
でも、本当なら俺の上にはもう一人いるはず。
ついでに、この辺りのゲーセンで「無敗」を誇るのも、俺じゃない。
ねーちゃんだ。
今日もスコアを更新して、ねーちゃんへのお土産としてUFOキャッチャーでお菓子を大量に落としてから家に帰る。
腕一杯にお菓子を抱えた俺がリビングに入っていくと、ねーちゃんはいつも嬉しそうな顔をする。
「500円でこんなに取れるなんて、UFOキャッチャーってお得だね」
「じゃあねーちゃんも今度一緒に行こうぜ」
「えー、あそこ騒がしいからあんまり近寄りたくない」
「ちぇっ、面白い格ゲーあるのに」
「その手には乗らないよん」
ゲームという言葉を出しても、ねーちゃんはゲーセンに行こうとしない。
家に居たり、図書館に行くことが好きなねーちゃんは静かな場所の方が好きってことだ。
俺は図書館なんてめったに行かねえけど。
家に引きこもっていることが何よりも好き、と言うねーちゃん。
それでもおとなしいかと言われればそうでもなくて、ねーちゃんは地味と派手の中間くらいだ。
俺からたっぷりのお菓子をいつも貰う代わりに、ねーちゃんは二月に一回くらい俺の欲しいものを買ってくれる。
テニスのシューズとか、ゲームとか、CDとか。
たまにちょっとした小遣いもくれる。
俺から受け取ったお菓子を自分の部屋に持って行ってから、再びリビングにやってきたねーちゃんは氷帝の制服を着ていた。
今日は日曜で休みだし、もう夕方なのに。
「ねーちゃん、なんで制服着てんの?もうすぐ夜じゃん」
「生徒会のメンバーで晩餐会」
「ばんさんかい?」
「皆で一緒にご飯食べるんだって。赤也から貰ったお菓子食べたかったのに」
さすがお嬢様、おぼっちゃま学校って感じだ。
そんな学校で生徒会に入ってるねーちゃんは、学校でどんな生活をしてるんだろう。
洗面所で髪を整えて、ねーちゃんは出かけていってしまった。
かーちゃんが夕飯を作ってる美味しそうな匂いがする。
でも、今日の夕飯にねーちゃんはいないのか。
つまんねーの。
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