切原さん家 | ナノ


▼ 俺とねーちゃん

俺の家は、四人家族だ。

とーちゃんとかーちゃんと、ねーちゃんと俺。

喧嘩はよくするけど、仲が悪いのかといわれればそんなことはないと思う。

年に一回くらいは皆で旅行に行くし、飯もなるべく一緒に食べるようにしてる。

とーちゃんはよくわかんねえけど外資系の会社で働いていて、かーちゃんは専業主婦。

そして、ねーちゃん。

皆の前では「姉貴」と呼んでいるけど、ねーちゃんはその呼び方があんまり好きじゃないらしい。

「姉御みたいでやだ」というのが理由らしいから、本人の前ではなるべく言わないようにしてる。

他の人の前では響きがかっこいいから「姉貴」と言っていることは内緒だ。



「赤也、ゲームしよー」
「おー」



風呂上がりのねーちゃんと一緒に、リビングでゲームをする。

平日はいつもこうだ。

俺の部活や、ねーちゃんの生徒会でご飯の時間がバラバラになっても、どっちかの風呂が終わればゲーム。

とーちゃんとかーちゃんは、俺たちのゲーム好きをほとんど諦めてるらしい。

それぞれ頑張ってることがあるから少しくらいはいいだろう、ってことでもある。

なかなかいいところのあるとーちゃんとかーちゃんだ。

やるゲームは、アクションゲームばっかりだ。

ねーちゃんはよく一人の時はRPGをしてるらしいけど、俺はそういうゲームは苦手だ。

ちまちま進めてると内容を忘れちまうし、一気に勝負がつく方がスッキリする。

今日は俺の好きな格ゲーをやる日だ。



「じゃあ、私このキャラにしよっかなー。イケメンだし」
「ねーちゃんずりぃ!俺もそいつがいい」
「えー、赤也そのキャラでいいじゃん。イケメンだよ」
「おっさんじゃん!真田副部長みたいでやだ」



俺とねーちゃんは、通っている学校が違う。

俺は立海大附属中の二年で、ねーちゃんは氷帝学園中等部の三年。

家からは立海の方が近いのに、ねーちゃんは氷帝を選んだ。

理由は、「一度くらいお嬢様学校に行ってみたかったから」らしい。

今思うと呆れるけど、俺はその理由にあこがれて中学に上がるときに氷帝に行こうとした。

その時は、「テニスで強くなりたいなら立海に行きなよ」とねーちゃんに言われて、しぶしぶ立海に行くことにした。

その選択は間違ってなかったと、今なら胸を張って言える。

立海に入ったばっかりの頃、先輩たちに全然追いつけなくて悔しかった時も、ねーちゃんはなんだかんだと世話を焼いてくれた。

いつもみたいにゲームしたり、ご飯を一緒に食べてくれただけだけど、俺がイラついてた時も全然変わらなかった。

こういうところではやっぱり、ねーちゃんなんだなと思う。

一個しか年が違わないし、先輩たちと比べても子どもっぽかったりするから年上とはあんまり思わねえことが多いんだけど。



「よっし、勝った!赤也、麦茶持ってきて」
「ちょ、もう一回!もう一回やったら俺が勝つ!」
「いいから麦茶ー」



コントローラーを放り出して、ねーちゃんはキッチンにある冷蔵庫を指さしたまま動こうとしない。

ちぇっ、とこっちが聞こえるように舌打ちしても知らんぷり。

やっぱりねーちゃんは子どもだ。

でも、俺より少し格ゲーの強いねーちゃんは、世界に一人だけのねーちゃんだ。

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