▼ プロローグ
中学校三年間でわかったことがある。
「部活」というものは、やっておいて損はないということだ。
中学校一年では何もせず、二年でも何もせず、三年になって生徒会で会計をした。
それなりに充実していたと思っていたのだが、周りと比べてみたらそうでもなかった。
周りの部活をやっていた人、何かに熱中していた人はもっときらきらしていた。
三年間続けてきてよかったと、心の底から笑っていた。
その感情を、高校では自分も味わいたいと思った。
美的センスもなければ、運動能力が高いわけでもない。
それでも部活に所属したかった。
三年後、この高校を卒業する時に「この三年間熱中していたこと」を仲間と共有したいのだ。
「辻内紗代です。部活はまだ決めていませんが、どこかの部活のマネージャーになれたらと思っています。よろしくお願いします」
女子の中でも小柄な体。
入学してすぐの新しいクラスの中で行われた自己紹介が終わり、紗代は頭を下げて着席した。
周りにいるのは、顔も名前もよく知らないクラスメートたち。
この高校のことも、どこに何があるのかよくわからない。
初めてだらけのこの環境で、新たなことを始めたいと思った。
マネージャーとして、どこかの部活に関われたらと。
他のクラスメートの自己紹介に耳を傾けながら、紗代は貰ったばかりのお便りに目を落とした。
各部の紹介が簡潔に載せられており、彼女にとっては何よりの情報源だ。
どれも魅力的なことが謳われた紹介を見ながら、少し口許が緩む。
新しいことを始められるのだ。
自分の、この手で。
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