彼と彼女の導火線 | ナノ

 服装チェック

風紀委員会の当番の日がやってきた。

当番は縦割りのようで、今日は1年から3年のA組が担当だ。

楓が登校初日に見た校門前にいた集団が風紀委員会の仕事であり、やっていたことは服装チェックだ。

校則に違反するような服装はしていないかどうか確認し、違反していた場合には口頭で注意をしなければならない。

名簿にもチェックされ、いくつかのチェックが付けば担任や親の元へと注意が行くようになっている。

朝の部活がある生徒を見落とさないためにと設定された時間はいささか早く、まだ生徒はほとんど見当たらない。

教室に荷物を置いてから校門に向かうと、この前委員会で出会った丁寧な口調の先輩がいた。



「おはようございます、日向さん。お早いですね」
「柳生先輩、おはようございます」



柳生比呂士という名前の先輩は男子テニス部のレギュラーでもある。

委員会があった翌日に風紀委員会に柳生先輩がいた、という話をすると周りの友達の多くはうらやましがった。

真田と柳生というテニス部レギュラーが二人も所属する委員会。

レギュラーと少しでも話したいと思う人ならば、入りたいと思うのが当然だろう。

楓からすれば「やたらと丁寧な口調の男の先輩がいた」という話をしたかっただけなのだが、周りの反応を見て驚いてしまった。

本当にこの学校ではテニス部が人気なのだ。

柳生と二人で校門の前に立っているものの、なかなか他のメンバーは現れない。

服装チェックが始まる時間まで五分はあるが、この集まり方が普通なのだろうか。



「そろそろ真田君が来る時間ですが、この集まり方はよろしくないですね」



話を聞くと、真田は男子テニス部の練習メニューを考えてからこの服装チェックにやってくるらしい。

柳生も男子テニス部ではあるが、部長や副部長といった役職にはついていないため、早く来られるんだとか。

そういった話をしていれば、テニスコートのある方向から真田が歩いてきた。

校門前に集まった二人に目を留め、徐々に眉間の皺を増やしながら近づいてくる。



「おはよう。来ているのは二人だけか?」
「ええ、一年生二人と二年生の男子が来ていません」
「まったくたるんどる!」



突然大声を出した真田に、楓はびくりと体を揺らす。

近くでこの声を聞くと、とんでもない迫力だ。

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