ギュッ、ギュッ、と雪を踏む音と感覚。 冬は寒い。 当たり前のことでも、やはりこの寒さを恨まずにはいられない。 お互いの呼吸の早さは分かりやすく、空中に白い息となって吐き出される。 さほど背丈の変わらない二人組の一人がボソリと口を開いた。 「……寒いね」 「うん、寒い」 その会話だけでもお互いの頬はますます染まり、歩くスピードはどんどん速くなっていく。 ギュッ、ギュッ…― その音が、一定のリズムで刻まれていると、だんだん世界には自分たち二人しかいないような気分になってくる。 雪の積もる道路に悪戦苦闘している車も、売り込みのためにビラ配りをしている人もいないような感覚。 「……ねえ」 一人が小さく口を開く。 その声を聞いて、もう一人が答えた。 「何、リョーマ君」 「ちょっと止まってくんない?」 「え?」 「ほら」 紀里が立ち止まりリョーマを見ると、そこには差し出された手。 こんなに寒いにも関わらず、手袋は着けていない。 っていうか、意外と手……大きいかも。 「早くしてくんない?寒いんだけど」 「あ、ごめん」 ギュッと繋いだ手は、やっぱりお互い冷たくて。 そういえば私も手袋着けてなかったな、と今更思った。 リョーマ君はからかうような口調で笑った。 「手、冷たいんだけど?」 「お互い様でしょ」 「ちぇっ」 そしてまたギュッと手を再び強く握って、ギュッギュッと雪の道を歩いた。 (by 物書きさんに10のお題) END 2011/01/11 ←短編一覧 |