もふもふ、もふもふ。 白いタヌキのような猫。 図書館帰りの私は、住宅街の中の通りで不思議な動物に会った。 「迷子?」 「ほあら」 見た目と同じく不思議な鳴き声。 しゃがみ込む私の目をジッと見るビー玉のような瞳。 そっと手を差し出してみれば逃げる様子もなく、私はそのまま抱き上げた。 「やっぱりもふもふ」 腕の中のもふもふに満足しつつ、私は一人笑った。 時間に余裕はたっぷりあるし、少しこのコと遊んでいこう。 そう思い、近くの公園に入りベンチに腰をかけた。 ゴロゴロと喉を鳴らす姿が可愛らしい。 「え、カルピンまだいないの?」 「ええ…そろそろ帰ってこなきゃ変でしょう?」 休日の部活が終わり、西日が強く注す中リョーマは家へ帰ってきた。 カルピンはまだ帰ってきていないらしい。 昨日の夜から行方不明で、今日になればご飯を食べに戻ってくるだろうと楽観的に考え朝に家を出たリョーマ。 気まぐれな猫だから、と考えればそこまで不安になる必要もないのだが、カルピンは自分の家での相棒のようなものだ。 「ちょっと捜しに行ってくる」 「リョーマさん!?」 肩に掛けていたラケットケースやバッグを玄関先に放り投げ、リョーマは走り出した。 夕日が出ている道は燃えるように明るかった。 「………あ」 程なくして見つけた。 自分の探していた相棒と、そして…― 「…里見?」 クラスメートを。 夕日に照らし出された状態でベンチで座ったまま眠りこける紀里、そして彼女の膝上で気持ち良さそうに寝る相棒。 「カルピン」 軽く呼べば、カルピンはむっくりと起き上がりリョーマを見据える。 そして「ほあら」と鳴くと再び紀里のお腹に顔をこすりつけ、目をつむる。 おそらくリョーマの気のせいだろうが、目をつむる直前に自分を「うらやましいだろう」と言わんばかりに見た気がする。 「…むかつく」 カルピンを鋭く睨み、リョーマも空いていた紀里の隣に腰かける。 するとすぐに紀里は寄り掛かる場所を見つけたと思ったのか、リョーマの肩に寄り掛かってきた。 ポスッと紀里の頭が肩にかかるのを感じ、リョーマは「ん?」と横目で紀里を見た。 「なんかあったかいね、あんた」 誰も答えるものはおらず、リョーマはそっと紀里の頭に手を伸ばす。 触れてみればサラサラとした感触、そしてずっと寝ていたのか髪に含まれる日光の温かな温もり。 「ずっと寝てたんだ?」 馬鹿じゃないの、と吐き出すリョーマの声は飛び去るカラスの声に掻き消され。 紀里の頭をゆっくりと撫でつつ、横目でカルピンを睨みながらふて腐れて呟いた。 「今度は俺にひざ枕してよね」 着々と沈んでいく夕日が橙色で眩しい。 カルピンを見つけたらさっさと帰ろうと思っていたものの、今は彼女との時間を優先させようと考えたリョーマだった。 END 2010/09/04 ←短編一覧 |