綺麗なだけが美人じゃない【1】



ホグワーツから出発した汽車はあと少しで駅に着く。ざわざわとした喧騒の中で、生徒達は、久しぶりに家族に会える喜びを胸に、ローブから私服へと着替え始めていた。

「ハリー、ハーマイオニー、入ってもいいかい?」
「どうぞ、ロン」

ハーマイオニーが返事をすると、更衣室代わりにしていたコンパートメントに、既に私服となったロンが入ってくる。

そして、ハリーを見てポカンと口を開けた。

「ハリー!君、いつのまに服なんて買ってたんだい?」

「ええと...」

「ロンったら見すぎよ!ふふ、ハリー、とってもかわいいわ!」

ハリーは今、ノースリーブの清楚な黒いワンピースに身を包んでいた。白いリボンタイと、袖や裾にあしらわれたレースが上品に黒い生地を飾っている。ハリーの白い肌と、ワンピースの黒のコントラストが美しい。シンプルだが質の良いその服は、ハリーによく似合っていて、まるでどこかの令嬢のようだった。

「でもまあ、びっくりね。その蛇がハリーの服を選んだなんて」

「ええ!?蛇が?」

ロンが素っ頓狂な声を上げる。

「うん。今まで僕、ダドリーのお下がりしか持っていなかったんだけど・・・ナギニがそんなのみすぼらしいからだめだって」

ナギニ(に入っているヴォル)が通信販売のカタログを持ってきたときのことを思い出しながらハリーが言った。ハリーがパラパラとページをめくっていると、蛇が尾でこの服を指し、

《これにしろ》

と言ったのだった。

「へえ・・・その蛇、随分センスがいいんだな」

蛇に表情の変化はないが、ハリーにはなぜか、ヴォルデモートが満足げな顔をしたように見えた。

その時、突然コンパートメントの扉が開いた。


「マグルのところへ帰る準備はできたかい、ポッ・・・!」

入ってきたのは、ドラコ・マルフォイとその取り巻きだった。が、マルフォイはハリーを見た瞬間、目を見開き固まってしまった。


「どうしたんだマルフォイ?顔が赤いぞ?」

ロンの言葉も、マルフォイには聞こえていないようだ。

「マルフォイ・・・?」

ハリーがおずおずとマルフォイの顔を覗き込むと、マルフォイはハッとして後ろに下がった。その目は相変わらず、ハリーを凝視している。

「ななななんでもない!!クラッブ、ゴイル、行くぞ!!」

マルフォイはそう言うと、来た時と同じくらい突然にコンパートメントを出ていった。

「あいつ、なんだったんだ?」
「さあね?ふふっ」

なぜかハーマイオニーだけが楽しそうにニヤニヤしていたが、ハリーにはさっぱり分からなかった。
ヴォルデモートは

《・・・糞餓鬼が》

とだけ言って、目を閉じた。


*


キングズ・クロス駅に到着し、ロンやハーマイオニーにも別れを告げたハリーは、ダーズリー達のもとへ向かおうとしていた。だが、一歩踏み出した瞬間、何者かに肩を掴まれる。

「!?マルフォイ・・・?」

それはマルフォイだった。また顔が真っ赤になっている。

「その、ポッター、」

マルフォイは大きく息を吸った。

「夏休み!手紙、書くから!お前も書ッッ!!」

言葉の途中で舌を噛んでしまったらしい。痛そうに口元をおさえている。

「うん、手紙・・・?書くよ、きっと。」

ハリーがそう言うと、マルフォイはぱっと顔を輝かせて

「絶対だぞ!」

と言って、走って行ってしまった。ハリーは手元のヴォルに、そっと蛇語で話しかけた。


「《マルフォイの奴、急にどうしたんだろう?僕に嫌がらせの手紙でも書きたいのかな》」

蛇はマルフォイの後ろ姿を哀れむような目で見た。

《・・・フン、あいつの自業自得だな》

ハリーにはヴォルの言葉の意味がよくわからなかったが、まあいいかと思い、苦々しい顔をしたダーズリー達のところへ向かう。



―なんとなく、去年よりましな夏休みになる気がしていた。






綺麗なだけが美人じゃない
(素直なだけがいい子じゃない)









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彼はコレクターなので、自分にとって価値のあるものはそれ相応の扱いをすると思うのです。(例えばデスイーターの扱いはわりと適当だけど、分霊箱は大事にしてたりとか)。なのでうちの帝王はハリーにはいい服を着せたがります。


マルフォイは好きな子ほどいじめちゃうアレ

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