思い出は色褪せぬまま
2話
「お袋が免許取りたての頃、腕試しだって俺を連れてドライブに行ってさ…。そこで見つけたんだ。辺り一面黄金色の海で、言葉じゃ言えないぐらい、すっげぇキレイなんだぜ」
妹達が生まれる前の、母親の優しい笑顔が一護の世界の全てだった、幼い頃。
患者の為にと、滅多に医院を休まなかった父に代わって遊びに連れて行ってくれた母と見つけた、秘密の情景。
「陽が暮れてもヒマワリ畑で遊んでてさ…。帰りが遅くなって、親父にこっぴどく怒鳴られた」
その向日葵畑は母と幼い一護だけの秘密の場所になり、その後も母と二人で何度も訪れた思い出の場所だった。
「そんな無邪気な頃があったなんて……強面の君からは想像できないな」
「誰がコワモテだよッ!?」
いつもの戯れ合いのような軽口に肩を竦めただけでやり過ごし、一護は懐かしそうに瞳をすがめた。
「もう10年以上行ってねぇけど……免許取ったら、また行ってみてぇなァ…」
「当分、先の話になりそうだね」
「まァな…。その時は、お前も一緒に来いよ」
「僕が……?」
「お袋に言われたんだ。家族より大切なヤツが出来たら、あそこでプロポーズすれば絶対オチるって」
「…………は?」
「もう少し大人になったら……。きちんとしたいんだ」
「!!」
「もちろん、お前に」
「……黒崎……」
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