訣れの時
2話
自分にとって彼はクラスメートであり、ライバルであり、戦友でもあり………けれど、それだけじゃない、それ以上の何かで強く惹きつけられている相手。
その曖昧で複雑な感情を何と呼べば良いのか知らないが、それでも雨竜にとって一護は、唯一無条件で背中を預けられる相手だった。
俺が護るーーーと、仲間の、友の、幾多の人々の未来を背負う背中は、どんな局面を前にしても微塵も揺らがない。
まっすぐに前を見るその隣に立ちたいと、そう思うようになったのは、いつの頃からだったろう。
きっと誰も知らない、一護にも明かした事のない、雨竜だけの秘密。
(それなのに……敵として君に弓を向ける時が来ようとは………)
一際高い塔の頂きから。
遙か下方に見える地上に、光を弾く鮮やかなオレンジの髪が見える。
懐かしくさえある見慣れた、その色。
けれど今は、自分からは酷く遠い世界に思える。
その色彩も、その存在も、何もかもが。
湧き上がる切なさが、ジクジクと心を疼かせる。
雨竜は目を眇め、痛みを押し殺す為にマントの胸元を握りしめた。
こんな想いを抱えているなんて、きっと一生黒崎は気づかないままなのだろう、と思う。
(……………)
言葉にならない息を吐き、雨竜は弓を構えた。
引き絞られた弦から放たれた霊子の矢は、その行く手を遮るよう一護の足下に突き刺さった。
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