>> 書生×娘さん 時は大正、西洋の文化が生活に馴染み始めたこの頃。緑そよぐ田舎の屋敷から、青年は手紙を書いていた。尊敬する文筆家へ宛てた二十九通目の手紙である。 青年の手紙は、確かに文筆家の元へ届いた。清くして心豊かな言葉の連なりは文筆家の胸をうち、思わず感嘆させたほどであった。 「この御浦十郎という青年、なかなかに感性豊かだなあ。そうは思わないか? 花親」 >> 妖帝×千里眼の方 明治四十二年、集落が見渡せる大地主の屋敷には、異端の娘が居た。年の頃は十七、“千里眼の方”と持て囃された娘は、屋敷の一室に幽閉され、十一年もの月日を過ごしたが――。 月が妖しくひかる、とある夜のことだった。 「橙とはお前のことか? ……己がわざに出向いたというに、下らん。ただの小娘ではないか――」 ファンタジー/マリオネット執事×お嬢様 ★home |