23:01 #最期を童話エンディング風に書く
#非公式rtした人の最期を童話エンディング風に書く
たくさんの反応ありがとうございました!
▼砂時計と少年
その手が掴めたものは、たった少しの砂でした。指をすり抜けて流れていくそれを、ただぼんやり見つめていました。「ぼくが掴みたかったお母さんのすそも、こんなふうに、流れていくだけだったのかなあ」
▼これからの君に
「だいすきだよ」空の五線譜を見上げて、ほら、わらってみせて。いつものように歌っていこう。「わたしもだいすきだよ」星の音符が見えないね。二人はあははと笑いました。「じゃあ、また来世で」
▼道化師
大好きなひとの晴れの舞台に、たくさんのお祝いの花を。少女は天使の微笑みで二人を送り出しました。大好きなひとと、大好 きなひとの、幸福を祈って。それからひとしきり泣いて、また笑います。心を殺して
▼血溜まりの中にて
青い鳥をようやく見つけたのです。それも大きな大きな、 とてもきれいな! きっとあれこそ幸せを呼んでくれるに違いありませんでした。青い鳥が言いました。「幸せって何?」何も。そう、何も答えられませんでした。
▼青ざめた私
きみも立派なレディだね。そんな言葉に舞い上がって、赤 いハイヒールを履いてみたりもしました。きれいなイヤリングも。「おじさん、あたしきれい?」ああ、あとはワインが飲めたら完璧さ。ワインとそれから
▼生け贄の街
「何であの子を守れなかった?」そんな後悔をするくらいなら、あの子に嫌われる方がましでした。だからその手は絶対に放せないのです。最後の力で「君を守りたいから」少女を抱き寄せました。「僕がいく」
▼心肺停止
ひとつ、信じたものがあればいいんだ。それが青年の信じた言葉でした。彼女を大好きなこと。「そばにいてくれて、ありがと う。ぼくは果報者だ」病に蝕まれても、それでも青年は、彼女が大好きでした。
▼布と綿と焼却炉
長い剣と、立派な盾を携え、戦士は戦いました。ぼろぼろ になっても布をあてるだけで立ち上がれました。けれど戦士としては、年 老いてしまったのです。「これは?」「いらないでしょ? 捨てなさい」
▼稲荷の慟哭
長い年月を、ここで過ごしてきました。朱色の提灯がぼん わりと揺れ、祭り囃子の賑やかな景色。それも過去のものとなり果ててし まいました。「見たな」今は気狂いの女が、バールを振りかざして成す術も無く
▼神様の悪戯
月の綺麗な夜でした。灯りのいらないほど明るく、静 かな夜です。雨上がりの空気が心地好い、ワルツでも踊りたくなる夜。「あの三日月のナイフになら、この心臓を差し出してもかまわないわ」
▼死神
自分が醜いと嘲って生きてきた青年でした。もっと何か、で きないのか? 青年の欲望は黒く渦巻き、やがてもう一人の自分を見せるようにまでなってしまいました。僕が僕を見ている。かなしい声だったと、いいます。
▼バイオリンに奏でられた男
彼のバイオリンが奏でる音は、極上だと拍手喝采を浴びたといいます。彼の“バイオリンが”奏でる音。彼は溢れ返るほどの真っ白な百合で部屋を飾り、窓とカーテンを閉ざしました。白と静寂。
▼あなたはだあれ
どこを見ても、人形、人形、人形。異様な光景とどこ からか流れてくる哀しい旋律に、少女は気が狂ってしまいそうでした。あ あ!「私、私、私! どこを見ても!!」夢であればと願いましょうか?
▼赤い血を証明したくて
嗚呼、 哀れ。なんて憐れなんでしょう。その少女はうっかり足を一歩引いてしまった。そこは崖の上なのに――。王子さまが手を伸ばした時にはすでに遅く、 眼下には赤い血を咲かせた、人形が一人、落ちていました。