第6問


「騙されたぁっ!!」
勢い良く扉が開き、Fクラスの教室に明久が飛び込んできた。
「やはりそう来たか」
「やはりってなんだよ!やっぱり使者への暴行は予想通りだったんじゃないか!」
「当然だ。そんなことも予想できないで代表が務まるか」
「少しは悪びれろよ!」
雄二を睨みつける明久の制服は乱れに乱れ、破れているところさえあった。
あの後、なんとか級友たちの士気を取り戻すことに成功した雄二は、まず手始めにDクラスに宣戦布告することを提案した。
明久はその宣戦布告の使者(という名の生贄)に指名され、先程までDクラスに行っていたのだ。
「それより今からミーティングを行うぞ」
どうやら昼食を摂りながら話し合いをするつもりらしい。
コンビニの袋を持って教室を出ていく雄二に、千秋たちも各々の昼食を手にその後に続く。
「大変じゃったの」
「本当に大丈夫?」
「吉井君、痛かったら言ってくださいね?」
「うん、大丈夫だよ。ほとんどかすり傷だから。
 心配してくれてありがとう、皆」
「良かった……ウチが殴る余地はまだあるんだ……」
「ああっ!もう駄目!死にそう!!」
明久を気遣い弄りつつ、賑やかに屋上に向かっていく彼らの後を追いながら、千秋はちらりと隣を歩く青色の髪をした少年を見上げる。

「……土屋」
「…………何(サスサス)」

「さっき覗いてた時の畳の跡なら、もう消えてるけど」
「…………!!(ブンブン)」
ばっ、と頬に当てていた手を下ろし慌てて首を振っているが、全く説得力がない。
「いや、今更否定されても」
「…………!!(ブンブン)」
「……あのなぁ。俺はずっと隣でお前のこと見てたんだから、誤魔化せる訳ないだろ」
「…………っ!!?(ボタボタ)」
「おい、何故そこで鼻血を出す」
何故かこちらを向いて目を少し見開き、静かに鼻血を流している土屋。
もしかして、あの時瑞希のスカートの中が見えていて、今そのことを思い出したとかだろうか。

「……。何色だった?」
「みずいろ」

適当にカマをかけたら、見事なまでに即答された。
「お前……ホント隠す気ないだろ」
「…………!!(ブンブン)」
なんてやっていたら、いつの間にか屋上に着いていた。
雲一つない空に陽光が眩しい。
心地よい春風と陽光に、全員(但し、風に舞うスカートを注視している約1名を除く)が目を細めた。

「さて、早速本題だが……明久。宣戦布告はしてきたな?」
「うん。一応今日の午後に開戦予定って言ってきたけど」

各々思い思いの場所に腰を下ろし、昼食を広げる。
コンビニのパンや麺類、おにぎりとサラダに、手作りの弁当、果ては塩水など、取り出す物は皆様々だった。
「雄二。1つ気になっていたんじゃが、どうしてDクラスなんじゃ?」
「そういえば、確かにそうですね」
段階を踏んでいくならば1つ上のEクラスの筈だし、勝負に出るなら大本命のAクラスだろう。
雄二のことだから、何か考えがあってのことだとは思っていたが、確かに疑問ではある。
恐らくその質問が来ることを予想していたのだろう。
皆の視線を受け止め、雄二は鷹揚に頷いた。
「色々と理由はあるんだが……Eクラスを攻めないのは、単に戦うまでもない相手だからだ」
「でも、僕らよりはクラスが上だよ?」
振り分け試験でクラスを分けられているので、当然Fクラスはどのクラスよりも点数が低い。自分たちの召喚獣の力は、現時点で最弱だ。
「ま、確かに今の持ち点は向こうの方が強いかもしれないな。けど、実際のところは違う。
 お前の周りにいるメンツをよく見てみろ」
「えーっと……」
塩水を片手に持ったまま、明久はその場に集まっている仲間たちを見回す。
「美少女2人と馬鹿が3人とムッツリが1人いるね」
「誰が美少女だと!?」
「…………(ポッ)」
「ええっ!?雄二とムッツリーニが美少女に反応するの!!?」
「明久……ちょっと顔貸せ」
「えっ、千秋!?こっちは正確に理解してる!!?」
「まぁまぁ。落ち着くのじゃ、3人とも」
美少女の秀吉(もう1人の美少女は瑞希だろう。恐らく美波は馬鹿に含まれている)に宥められ、千秋は仕方なく引き下がる。

「ま、要するにだ」

コホン、と咳払いをして雄二が説明を再開する。
彼が言うには、体調の回復した瑞希がいれば、Eクラスと正面からやり合ってもまず負けることはない。
Aクラスが目標である以上、確実に勝てるEクラスではなくDクラスを初陣の相手に選んだ、ということらしい。
「だったら、最初から目標のAクラスに挑もうよ。
 Dクラスに勝てなかったら意味がないじゃないか」
「それを言うなら逆だろ馬鹿。Dクラスにも勝てない奴がAクラスに勝てるか馬鹿。お前は馬鹿か。あぁ悪いそういえばお前は馬鹿だったな」
「そ、そんな馬鹿馬鹿言わないでよ!」
「人のこと馬鹿っていう奴が馬鹿なんだよ馬鹿」
「自己紹介の時といい、今といい、なんか僕の扱い酷くない!?ねぇ千秋!!?」
「…………さっきの、根に持ってる」
「そのようじゃの」
「明久、千秋……お前ら一々話を逸らすんじゃねぇ」
「「雄二が言うな!」」
いつも明久と一緒になって話を脱線させている奴に言われたくない。
しかし、雄二は千秋たちの批難など無視して話を進めることにしたようだ。
「とにかく、だ。このクラスなら、Dクラスに負ける訳ないさ」
「本当に……?ウチらがDクラスに勝てるの?」

「ああ。お前らが俺に協力してくれるなら勝てる」

力強い笑みを浮かべ、雄二は千秋たちにそう言い切った。
全く根拠がない筈なのに、彼の言葉は何故だか周囲をその気にさせる。
彼のこの力も、Fクラスが持つ強みの一つだろう。
「面白そうね。やってやろうじゃない!」
「Aクラスの連中を引きずり落としてやるかの」
「…………(グッ)」
「が、頑張りますっ」
「うん、頑張ろう!」
「―――で?勿論もう作戦は考えてあるんだよな、雄二?」

「当然だ。それじゃ、作戦を説明しよう」
『おうっ!!』

打倒Aクラス。
そんな途方もない野望を胸に、千秋たちは雄二の言葉に耳を傾けるのだった。


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