1
ぬくもり(風千)
ゆっくりと動く、優しい手。
千尋の髪の感触を楽しむようにいつまでも撫で、時折掬っては微笑みを浮かべている。
「風早?」
「はい、なんですか?」
「髪、ずっと撫でてて楽しい?」
「ええ、千尋の髪ですから」
大切に育ててきた千尋。
何よりも優先すべき存在。
千尋以上価値のあるものなんてなくて、彼女の前では全て霞んでしまう。彼女が輝きを放っているから。それに彼女自身気づいていないのだろうけど。
そんな事を考えていると、不意にぎゅっと腰に腕が回される。
「千尋?」
「……時々ね、風早はここじゃない遠くへ行ってしまいそうな気がするの。私を撫でてくれながら別の、遠くを見てるような気がするの」
「……俺は何処にも行きませんよ。俺の生きる場所は姫の傍ですから」
「……本当?」
「ええ、本当ですよ」
すると千尋は、嬉しそうな、悲しそうな表情を浮かべて抱きついてくる。そんな千尋を抱き締めて、ゆっくりと頭を撫でる。
自分はここにいると教えるために。第一、自分は千尋の傍以外で生きていける訳がないのだ。千尋が呼べば何処へでも行く。千尋が居なくなれば必ず見つけ出す。それは千尋が人の「ぬくもり」を教えてくれたから。人間なんか滅びるべきだと思っていた自分に、唯一人の「優しさ」を「心」を教えてくれたかけがえのない人だから。
「風早、」
「はい?」
「大好きよ」
頬が緩むのを自覚しながら、抱きしめる腕に力を込めた。千尋が苦しくないように。千尋が好きだと伝えるために……。
了
【作者様より】
目指せほのぼのLove。見事撃沈(苦笑)風千は、ほのぼのしてるのが似合うカップルなのに、表現出来ていないという……orz
懲りずに素敵企画に提出させて頂きます。こんな駄文ですみません(苦笑)
(from.真雪)
藍川さまっ、今度はほのぼのですね、ありがとうございます( ̄▽ ̄〃)
ほんわりと温かな光景だけれど、EDの二人を知っていると切なくもあるお話ですね。でもやっぱり、ほんのり優しいお話だと思います〜。
企画へのご参加&素敵なお話をありがとうございましたっ!!
[*前] | [次#]