ぎゅっ(那千)


葦原家。
教師である風早は帰りが遅い。
なにぶん、テストの採点があるため今日は特に遅くなるだろう。
今日の当番は千尋。那岐は買い物に出かけようとする千尋の後ろ姿を見ていた。彼女はそれなりに真っ直ぐに育った。だから嫌だ。他の男子の好意に気づきもしない。親がわりだからと風早にベタベタするせいで、警戒心というものが全く感じられない。那岐と風早がガードしているからまだいいようなものの。
そして、那岐が一番頭を悩ませているのは自分の事。どうやら一緒に暮らして面倒を見ているうちに、千尋を意識し始めてしまったようだ。好きだとか大切だとか、そんな面倒な感情いらないのに、自分には必要ないのに。千尋を見ていると、言い様のない感情に苛まれる。イライラする。自分をかき乱されてるようで。

「じゃあ、行ってくるね」

と、玄関を出ようとする千尋をぐっと引き寄せ、後ろから軽く抱きしめる。

「那岐!?」

「今日はきのこスパがいい」

「ん、わかった」

彼女に気付かれないよう、自然な抱擁。最も鈍すぎるから気づかないだろうが。気づいて欲しいような、欲しくないような複雑な心境がない交ぜになる。

「行ってきます」

パタンとドアが閉まると同時に長いため息をつく。

「僕は、千尋を好きになっちゃいけないんだ……」


誰に聞かれる事もなく、その言葉は静寂に呑まれていった………。




【作者様より】

突発的な那岐×千尋。
まずはすいません。明るくするつもりでしたのに、なんだか暗くなってしまいました……。本当にすみません(苦笑)文章能力が本気で欲しいです。そして素敵企画へ参加させていただいてありがとうございました!

*****

(from.真雪)
藍川さま、この度は当企画へのご参加ありがとうございます〜っ!!
自分の気持ちに気付いて、でも好きだからこそ、千尋を不幸にしたくないからこそ言えない那岐の心の葛藤。それがとても伝わってくるお話で、凄く素敵ですっ(>_<)///
本当にありがとうございましたっ!!



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