「きゃあっ!」

「わ!ちょっとなまえちゃんだいじょうぶ!?」

「だ、だいじょうぶ…、ありがとルーシィ」


つい、目が追いかけてしまう。

いつもなにもないところでつまづく、転ぶ、一日に一ヵ所は必ずと言っていいほどなにかしら怪我をする、
どこかから飛んできたものはほぼ当たる、溝があると一回は必ずはまる、ドジっ娘なんていう可愛いもんじゃないくらい、
究極のドジであるなまえは俺の女。

転ばないか、怪我しないか、正直気が気でない。

要は心配なわけだ。

表には出さないが。


「おぉなまえー!今日もドジかましてんのかー!笑えんな!」

「あい!」

「ナツ…いや、わらえないけど…」

「なまえも飽きねえなあ」

「…あのねグレイ、わたしすき好んでドジかましてるわけじゃないのよ?」



ギルド中の野郎たちも俺と考えることは同じらしく、アイツがドジかましたら真っ先に駆け寄り、声をかける。

俺はその度にいらいらして、むしゃくしゃする。

けど自分が一番に声をかけることはできない。

そのことがまた俺を苛立たせた。


それもこれも全部アイツがドジだから悪いんだ。



「ねえなまえ、ちょっとおつかい頼まれてくれないかしら」

「あ、はい。わたしでよければ」

「いくつか買ってきてほしいものがあるの」

「じゃあ買ってきm「なに?!なまえがおつかいに行くだって!?」

「なんという自殺行為!」

「早まるななまえ!」

「転ぶなよ、はまるなよ」

「なんなのこの人たちちょっと失礼すぎないかしら」



思わず俺も同じことを思ってしまった。

アイツが一人で買い物?

ありえねえ無理だ。

いやしかしここでおつかいが成功すれば晴れて「究極のドジ」から「ドジっ娘」に格上げか?格上げなのか?

それとも代わりに俺が行ってやった方がいいのか?




「お、おい、」

「あ、ガジル。わたしちょっとおつかい行ってくるね」

「お前、一人で…」

「え?だいじょうぶだよ買い物くらい!ガジルは心配しすぎなの」


なまえはいってきます、と笑顔で俺に手をふった、


「きゃっ!」


瞬間こけた。


ほんとにアイツ一人で行かせていいのか?いいのか?

大丈夫なのか?


やっぱり俺が行った方がよかったのか?




なんてごちゃごちゃ考えてたら、堪らなくなって、俺は結局アイツのあとを追うことにした。


ギルドを出て少しすすむとそこにはアイツの姿。

あろうことかすぐ下に川がある細い段差の上を陽気に歩いていた。


「(アイツ!ドジのくせしやがって!)」


自分のドジさの自覚がねえのか、アイツは。

鼻歌なんか歌ってる場合かよ。

内心そうつっこみながらも俺はいつアイツが落ちてもおかしくない、とひやひやしながらずっと後ろから見ていた。

あの様子だとあんまり心配いらなかったか?なんて考えていた瞬間だった。


「…っと、きゃ…っ」

「!」


ぐらりと揺れるアイツの体。

運悪く傾いたのは川の方へだった。


「なまえ!!」


頭で考えるよりも体が先に動いていた。

間一髪のところで腕をつかみ、おもいきり引き寄せて、抱き締める。

なまえはえ、え、とあまり状況を理解できていないようだった。


「ガ、ガジル?」

「…っこの馬鹿!あんなとこ歩いてんじゃねえ!」

「えっ、あ、ご、ごめんなさい」

「ったく…あんま危ねえことすんな、馬鹿」


ごめんなさい、と謝りながら俺の首にしがみついてくるなまえ。


「…でも、」

「あ?」

「わたしが危ない目に合ったら、またこうして助けてくれるんでしょ?」



照れたように笑うなまえが愛しくなって、少しだけ抱き締める力を強くした。


「ならせめて、俺の目の届く範囲にいろ」




君を守り隊
(ドジっ娘への格上げはまだまだだな)



20120301 蒼井
タイトルだせえ






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