「不法侵入ー!!」

(隣に住んでいる人は)

隣の部屋に女の子が引っ越してきてはじめて聞いたそれは、本当に侵入者がいるのかと思った。何か武器を、助けを、と右往左往しているうちに楽しそうな声が聞こえた。本物じゃなくてよかった、とひどく安堵したのを覚えている。

次の日、はじめて隣人の女の子を見た。大家さんから"可愛い子"とは聞いていたが、あんなに可愛いとは思わなかった。まぁ、僕のタイプじゃないけどね。

右手にはフェアリーテイルの紋章があったからギルドの人間なのだろう。街の建築物を壊したりするが、僕はあのギルドが大好きだ。女の子が2,3日家を空けるのは、多分仕事に行っているのだろう。

羨ましいな、と僕は思う。

毎日のように聞こえてくる"不法侵入"という声。毎日聞いているうちに事情はつかめた。ギルドでの仲間たちが女の子より先に家にいるようだ。

ある日、窓を開けていると視界の隅に桜色の髪の少年と空を飛ぶ青色の猫が目に映った。彼らは女の子の家の窓から部屋に侵入しようとしていた。彼らは不法侵入の常連なのかもしれない。

「ルーシィの家の窓って、建て付けが悪いのかいっつも開いてるよなぁ。」

あれ?と僕は少年の言葉に首をかしげる。ルーシィ(女の子の名前が分かったのは思わぬ収穫だった)が引っ越す8日前にこのアパート全部屋の窓の建て付けは直したはず。

もしかして、と僕は思う。ルーシィは毎日鍵を開けとくのかもしれない、彼らのために。"おかえり"を聞くために。

僕とルーシィの秘密かな、なんて。

……我ながら気持ち悪いな、この発言。










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