*学パロです


キミはそうして魔法をかける

「なぁ、手伝うか?」
「ん、ありがと」

先生に教室へと運ぶよう頼まれたプリントの山は、職員室では大丈夫と思ったものの、時間が経つにつれてじわじわとルーシィの腕を辛くする。
このままだと落とすかな、と思っていたところでのナツから提案に、お願いします、と素直に頼った。
よっ、と上から3分の2程の量を軽々と取るナツに、さすがは男の子だな、と感じた。

「後で何か奢れよなー」
「無理よ。私、金欠だから」
「…お前、いつも金ねーな」

可哀想なものでも見るかのような(実際可哀想なのだけれど)その目に、うるさいなぁ、と睨む。
けれど手伝ってもらっているので、それもそこそこに、前を向いた。
と。

「…はぁ」
「そんな大袈裟に溜め息吐くなよ。こっちまでヤル気なくすだろ」

だって、と口の中で呟く。
目の前にあるのは階段で…少し軽くなったとはいえ荷物を持っての段差は辛い。
めんどくさいな、と気怠げに足を踏み出して、それがいけなかったのかもしれないが――

「きゃあ!」

――バランスを崩した。

「フラフラしてんなよ」

一段目だったことや後ろにナツがいたこと、特に後者が幸いしルーシィは転ばずにすむ。
具体的にはナツがその腕にプリントを抱えたまま、肩と背中でルーシィを支えた。

「あ、ありがと」
「どーいたしまして」

いくぞ、と今度はナツがルーシィに背を向けて先に歩き出す。
ルーシィから見えるその背中は大きくて――。

って、なんで私ときめいてるのよ!
まぁ、確かにさっきは嬉しかったし、ナツの体って意外にガッチリしてるなー、なんて思ったけど。
ちょっとドキドキしてるけど。
って、この鼓動はさっきのアクシデントのせいなんだけど!

ぶつぶつ、と何事か呟きながら百面相を繰り広げるルーシィに対して、ナツは若干引き気味だ。

「…キモいぞ、ルーシィ」
「なっ!この可愛い顔に!」
「出たよ、自意識過剰…自信過剰か?」

ちーがーう!なんて大きな声を張り上げていると――

「あっ」

――再び足を踏み外した。

今度は高さもあり、後ろにナツはいない。
尻餅程度ですみますように、と衝撃に備えてルーシィは固く目を閉じた。
と、考えていた衝撃には襲われず、代わりに腕を何かに強く引っ張られ、温かいものに包まれる。

「え?」
「だから、フラフラしてんなって」

目を開けるとそこはナツの腕の中で――助けてもらったんだな、とぼんやり思った。

「あーあ、バラバラだな」

ルーシィを助けるためにナツが腕から放したプリントは見事に床に散らばっている。
ナツはルーシィから体を離してそれを拾うために屈んだ。
対してルーシィはぼんやりとその場に立っている。

――何、これ

さっきと比べ物にならないくらい強く叩く心臓を、ぎゅっと服の上から押さえつけた。

「集めんの、手伝えよー」
「あ、うん」

その声に我に還ったルーシィは、慌ててしゃがんで集め始める。
その時に微かに見えたナツの頬が、ほんのり赤くなっていたのは多分気のせいじゃないんだろうな、と思った。




君とぼく。の彼方様へ、相互記念小説です。

恋に落ちる魔法です(何が)
甘くなっているでしょうか…むむっ。

彼方様のみお持ち帰りOKです。
これからもよろしくお願いします。

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