じりじりと焦げるアスファルトのにおい。 じわじわと繰り返される蝉の声。 じんじんと迫る頭痛のような太陽の熱。 たまに静まる夏の音が、不思議な夢を見せた。 Hold me little tighter.「…ルー、…ルー……シィ、ルーシィ!」 「…っん……ん?」 何かが肩を揺らしていて、重たい頭を上げるとぼやけた視界の隅にナツがいた。 霞む目を擦りながらその視界に時計を入れると短い針は頂点を少し過ぎていて、窓からは熱気が侵入している。 ――昼寝、しちゃったのかも。 なかなか小説の続きが思い付かなくて、ボーッとしているうちに寝てしまったらしい。 はぁ、と溜め息を吐くと大丈夫か、とナツの声がした。 「…あぁ、うん。ちょっと寝ちゃっただけだから」 今日もナツは勝手に侵入したのだろうか。 大きく開かれた窓を見ながらそう考えていると不意に胸が切なさを訴えた。 ――何か、哀しい 突然襲ってきたその感情の理由が分からなくて、とにかく手で胸を押さえつける。 するともう一度、大丈夫かとナツが尋ねてきて、分からなかったから曖昧に笑った。 「ルーシィ、寝ながら泣いてた」 ナツのその言葉に頬をなぞると確かに涙の跡がそこにあって、指先に乾ききってない水気が移った。 ――そういえば、何か夢を見た もう覚えてないけれど、それはひどく哀しくて切なくて。 あぁ、だからこんなにも胸が痛むのか。 「ルーシィ」 聞き慣れた音程の、けれどいつもより落ち着いた声とともに、ぎゅっと背中から熱が伝わってきた。 汗ばんだ肌と肌の接触は、今はとても心地よい。 「ナツ」 そっと名前を呼ぶと腕に更に力が加わって、大丈夫だ、とナツが言った。 一羽の小鳥が眩しい空に羽ばたいた音がした。 |