ぴち、ぽちゃん。
いろいろな音を立てながら傘にあたる雨。
くるり、と傘を回転させると、冷てぇ、と隣から不満が聞こえた。

雨天、傘1つ



「ルーシィのせいで濡れた」
「ナツは濡れてもすぐ乾くから大丈夫」

もう一回、くるり、と回す。
傘についた雨粒が踊るように飛び跳ねた。

「雨の日ってちょっと楽しいよね」
「そうか?」

でも、ちょっと淋しいかも。
その感情は表に出さないで、そうよ、と一言だけ。
傘が作るこの距離が、なんて、言えない。

「俺は好きじゃねーなぁ」
「そうなの?」
「傘さすのがめんどくせぇ」

心底嫌そうに言うその姿が可愛くて、つい、くすり、と笑いが漏れた。
なんだよ、と口を尖らせたナツは、何か思い付いたように、あっと声を上げた。

「ちょっと入れろ」

自分の傘を閉じてぐいっと入ってくるナツ。
ちょっと!と声を張るが聞く耳を持たない様子のナツにルーシィは溜め息をこぼした。

それにしても、

「ち、近いんだけど…」

肌と肌が触れるか触れないか。
たまにこつん、とぶつかる肩からはナツの熱が伝わってくる。

「そうか?」
「そうよ」

ナツから伝わる熱がルーシィの心臓を急かせる。
腕に当たる雨が、急激に上昇したルーシィの体温を気持ち良く奪った。

「いつもの距離じゃね?」

だろ?とニカッと笑う様子につられるようにこくり、と頷く。
それを見たナツは満足そうに笑って、ピシャン、と水溜まりを蹴飛ばした。
濡れるじゃない!と言いながら、ルーシィも満面の笑みを浮かべた。




6月7日〜7月7日拍手小説

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