フクシア「ね、どう?」 「いいんじゃね」 「これは?」 「あー、似合う似合う」 「こっちは?」 「良いと…って、それはねぇだろ」 ルーシィが手に持っているイヤリングは奇妙な形と色をしていて。 禍々しい、と形容するに相応しそうなそれはルーシィに似合いそうにない。 前のが良かった、とグレイが言うと、ルーシィはグレイを一瞥した。 「…こっち、見てたんだ」 イヤリングを新調したいと思っていた時にちょうどレビィにアクセサリーショップの割引券を貰い。 どうせならグレイに選んでもらいたいと思って一緒に来てもらったのに、グレイはずっと適当な返事ばかりで。 ――つまんない、の 刺々しいルーシィの声にグレイは、ん?と首を傾げた。 「何拗ねてんだよ」 「別に」 不機嫌さを隠そうとせずに答えるその声に、グレイはむっと眉を寄せるがルーシィの視線は既に商品へ移っていて。 一体、自分が何をしたのだろう。 新しいイヤリングを選んでもらいたいの、そうルーシィに言われたからついて来たはいいが、女性ばかりでどこか居心地が悪い。 それに、これどうかな?とルーシィに聞かれ、似合ってる、と思った通りのことを口にするがルーシィはつまらなそうな顔をする。 ――選んで欲しいの、か 金髪に、琥珀の瞳。 いつも軽装をしているルーシィに似合いそうなのは、とそこまで考えて、なるほど、と口元を緩めた。 「ルーシィ」 じっとイヤリングを見て、何か良いのないかな、と探していると後ろからグレイに声をかけられて。 まだ怒ってますよー、という顔を作りながら振り向くと、グレイの手には小さくて可愛いイヤリングがのっていた。 ――今日の服に、よく合う どう?と聞かれ、一瞬グレイを許しそうになっていた自分から我に返る。 怒ってます、をアピールするような声音で答えた。 「…いい趣味だと思います」 「それはどうも」 つけてみな、と促されてしぶしぶといったように付ける。 「どう?」 「似合ってる」 「それ、だけ…?」 分かってくれたのかな、と思ったのだけど。 今日はいつもより可愛い服を着て。 可愛いイヤリングを見つけては、グレイに見せていたのは、言って欲しかったからで。 グレイはくしゃり、と泣きそうな顔をするルーシィをぎゅうっと胸に押し込める。 そのまま耳元に顔を近づけて、そっと。 「可愛い」 え、と聞き返される前に。 赤い頬を見られる前に。 買ってきな、とぽんと背中を押してレジへ送り出した。 |