好きになる瞬間は分からないのに、嫌いになる瞬間は明確だ。


涙の味



「ふぇっ…」

口からは押さえきれなかった嗚咽が漏れて、目からは涙が止まらない。
――どうしてこうなったんだろう。
きっかけは忘れてしまった。
それくらい、小さな、些細なこと。

"ナツと一生仕事行かない!"
"俺だってルーシィみたいなヤツ連れて仕事行きたくねぇよ!"

まるで小さな子供の喧嘩のようだけれど、大きくなった今ではその言葉の意味も大きくて。
あの頃は知っていたはずの喧嘩の終わり方も今は覚えていない。

「っ……ナ、ツ…」

唇から零れるのは最も会いたい人の名前で。
あの日以来、見ていない。

涙を拭いてズッと鼻をすすっているとかたり、と外から物音がした。
この音は、と驚きと期待に胸が鳴り、自然と涙も止まる。
けれどそんなはずないと心の中にある期待を打ち消して、そっと名前を紡ぐ。

「ナツ」
「…なんだよ」

いきなり聞こえたその声に、え、と小さく呟く。
その声はずっと聞きたいと思っていた声だった。

「ナ、ツ……?」
「他に誰がいんだよ」

1週間見ていないだけなのに、1年以上離れていた気さえする。
それぐらい久しぶりに見たナツは不機嫌そうに顔をしかめていた。

なんでいるの、と小さく呟く。
普通なら聞こえない小さな声でもナツには聞こえていて、名前、と言った。

「え?」
「名前、呼んだだろ」

だから来た、というナツの声を聞いて、一度は止まった涙がつうっと流れた。
それに気付いたナツがゆっくり近づいてきて、頬に顔を近づける。
舌を出してぺろり、と舐めとったのは涙と悲しみと謝罪の言葉、全部。

「しょっぱい」

そう言ったナツと目が合って、二人で小さく笑った。








Ms.Perfumeのティアラ様へ、こっそり相互記念小説です。
タイミングを逃してしまい、なんだか申し訳なくてリクエストに伺えませんでした。
勝手にごめんなさい!

喧嘩の内容も考えてはいたのですが、あまりに幼稚だったのでやめました。

もしお気に召していただけたらティアラ様のみお持ち帰りOKです。
これからもよろしくお願いします!◎

mainTOP


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -