1つ目・笑うと世界一可愛いとこ

人差し指で何かをクルクル回すルーシィの姿が視界に入った。

「なんだ?それ」

これのこと?とそれを手のひらにのせて首を傾げるルーシィ。そんな小さな動作までも可愛いと思ってしまうのだから、重症だ。

「あぁ」
「お礼にって依頼主がくれたの。マトリョーシカって名前らしいわ。中には一回りづつ小さい人形が入ってるのよ」

ほら、と次々その人形の中から一回り小さい人形を出していく。

「全部並べるともっと可愛いわ」

グレイもそう思うでしょ?と笑って同意を求めるルーシィ。そんなルーシィが一番可愛いと、いつか言えればいいなと思った。

2つ目・出会ったころから変わらない

「そんなに私って色気ない?」

色仕掛け成功したことない、と頬を膨らませるルーシィ。そうだなぁ、と考える素振りをするが答えは既にグレイの中にある。

「例えば、さ」

グッとルーシィとの距離をつめて耳元に口を近づける。

「キス、していい?」
「なっ……!」

ボッと音が聞こえてくるような勢いで赤くなるルーシィの頬。冗談だよ、とクスクス笑うとグレイのバカ、と体を叩かれた。
出会ったころから変わらない、見かけによらず純情な反応が色仕掛けが成功しない理由の1つだと思う、とは伝えない。
そういうルーシィの反応が自分で思ってる以上に好きなのだ。

3つ目・涙の理由

「泣いてんの、か?」
「あっ、これは違うの」

慌てて涙を拭き取ろうとするルーシィから、ふっと視線を逸らすと彼女の膝の上には開きっぱなしの本。
――なるほど
彼女らしい涙の理由に思わず笑ってしまう。

「なによー」

ぷっくりと頬を膨らませるルーシィに、可愛いなと思って、と告げる。
ロキみたいなこと言わないで、と溜め息混じり言うルーシィだが確かに顔が朱色に染まっていて。

「オレ、ルーシィのそういうところ、好きだけどな」

グレイのそのセリフが更にルーシィの頬を朱色に染めていく。
バカ、と小さく呟いたその唇にグレイはそっとキスをした。

4つ目・空気で伝わるところとか

「お前か犯人は」

グレイがそう言うと黒い影が振り向き、音もなくその場を離れたと思うと、次の瞬間には軽々と跳躍してグレイに襲い掛かってきた。
グレイは体を転じ、攻撃を避ける。その時ちらりと何かが光ったが――短剣か、魔法道具か。
そう考えているうちに、未だ体を立て直していないグレイに男は再び襲いかかってきた。執拗ですばしっこい攻撃。紙一重でグレイはそれをかわし、男の背後をとる。慌ててグレイを振り返る男だったが、グレイは既に体制を整えている。男の腹を狙い氷を纏った拳でパンチを放つ。
大抵のヤツならこれで倒れるが、と男を見ると、男はなんなく立ち上がった。
――間違いなく、魔法だ。
一般人ではない、少なくとも魔力の使い方を知っている者だ。そうと分かれば、と「ルーシィ!」と声を張り上げると、視界のすみで既にルーシィは金の鍵を握っていて、「分かってる」とでも言うような笑みがその顔にはあった。

5つ目・その顔、その声、その仕草

グレイはルーシィの頬にそっと手を添えてゆっくりと顔を寄せた。ルーシィはぎゅっと固く瞼を閉じて緊張した様子でその時を待つ。その様子が可愛くてふっと頬を緩め、距離を縮めた。そしてグレイはそっと目を瞑り――二人の唇が重なった。

「っと……初めてのキスのお味はいかがですか、姫様?」
「…っ」

かぁ、と頬を赤くしたルーシィはくしゃり、とグレイのシャツを掴み、そっと上目でグレイを見た。その反応に気を良くしたグレイは再びルーシィの唇を奪う。今度はルーシィの唇を割いて、その奧へ。

「…んっ……グ、レイ…っ」

時々離れる唇の隙間から、ルーシィの声がこぼれ落ちた。

赤く上気した頬も。
普段と違う艷のある声も。
シャツを掴むその手の力も。

その全てが、愛しい。

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