明るい部屋を背にしてブーツを履いて外に出る
寝静まった冬の夜 もうみんなは夢の中
わたしだけの足音が響く街
ここは――わたしだけの世界

The night without the moon



月のない、星が綺麗な夜だった。
小説のネタになるかもしれないと外に出て、寝静まった街を散歩した。
暗闇は怖い、けれど小さい頃から星霊に囲まれて育ったからかもしれない、星が輝く夜は怖くない。

「ルーシィ?」

なんだか私、詩人になった気分、と足を弾ませて歩いていると後ろからナツの声がした。
くるり、と体を回転させて歩いてきた道を振り返り、ナツの姿を視界にいれる。
屋敷にいたときは絶対にありえなかった夜の散歩に心が浮かれていたらしい、けっこうな距離を歩いていた。

「何やってんだ?」
「別に」

自分だけの世界に侵入された気がして、少し怒ったような返事になる。
けれどナツはルーシィの声色を気にした様子もなく続けた。

「こんな夜中に1人で危ねぇぞ」
「ちょっと外に出たくなっただけだから、もう帰るわよ」

そう言って家の方向へ足を踏み出すと、ナツも同じ方向に足を向けた。

「何で私と同じ方向に歩き出すのよ」
「いや、せっかくだからルーシィの家にでも行こうかと」
「こんな夜中に乙女の部屋に行こうとするなんて…!」

来ないでよ、と言えばケチだ、と騒ぐに違いない。
小さく溜め息を吐いて、紅茶飲んだら帰ってね、と言うと、やった!と屈託のない笑顔をした。
そんなナツを見て、胸の奥がくすぐったいように締る。

あ、と呟いて不意にナツが立ち止まる。
何?と一緒になって立ち止まれば、ほら、と手を差し出してきた。
一瞬躊躇して、そっと預ける。
意外にも男っぽい手と、それに預けた自分の手の対比が、少し頬を赤く染めた。


寝静まった冬の夜、街に響くのは2人の足音
ここは――2人だけの世界







3月9日〜4月18日拍手小説

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