トワイライトゲノム










カーテンからうっすら光が漏れている。
少しだけ、開けてみてみると、太陽が少しだけこちらを見ていた。
鳥のさえずりもまだまだまばらで、地上を道行く人もいない。
ずるりずるりとタオルケットを体に巻きつけたまま引きずって、テーブルに置かれたままになっている昨晩入れた冷めたミルクティーをすすった。
寝起きで冷え切った体には少々応えるものがあるが、昨晩散散に酷使した喉は水分を要求していて、寧ろこの温度が丁度いいのではないかとも思う。
タオルケットがずるりとずれて、自分の裸体がさらけ出されて少しため息をつきつつ、床に落ちたそれを拾い上げる。
拾い上げる瞬間に体に付けられた痕を目で確認してしまい、冷えた体は少しだけ熱を持った。


(………明久は、)


まだ、眠っているようだ。
半開きの口が、相当に昨晩体力を使って疲れきっているのだ、ということを連想させる。
今はあどけないけれど、その口が、酷く自分に魅力的な言葉を投げかけることを知っている。
きっと、俺しか知らない。
明久が寝ている部分を避けて、腰にタオルケットを巻いたままぼふりと腰掛ける。
上半身を少し捻って明久の寝顔を見ながら少しずつ、体にまんべんなくいきわたるように残りのミルクティーを飲み干す。
カップを机のある部分まで持っていくのが面倒で、少しはしたないけれど床に置いた。
明久の寝ているシーツはぐちゃぐちゃで、昨日、どんなんことが繰り広げられたかは言うに事欠かない。
冷え切っていた体はふつふつと、でも順調に熱を帯びている。


「…ん…ぁ」

「………」


声が少し聞こえたので起こしてしまったのだろうかとも思ったが寝返りをうっただけのようだった。
仰向けに寝ていた明久の体が、こちらを向いている。
足をあげて全身でベッドに乗る。
タオルケットをはぎ取って、明久の右腕と左腕の間に割り込んで、抱きしめられているような、そんな体制を自分で作る。
温かい。


(………起きない。)


起きてほしいのか、また逆なのかはよくわからないけれど、体の冷えは全て満たされた。
近くで見る明久の顔。
吸い寄せられるようにキスをした。

明久の寝息を少しの間だけ、止める。
寝ている相手にこういうことをするのは申し訳ない気がして、少し名残惜しいけれど唇を離す。


「康太、どしたの?」


目を開けると、完璧に覚醒した明久がそこにいた。
さっきまで閉じていた瞳の中に自分が映っていることが少し嬉しい。
恥ずかしくもあるけれど。
満たされた熱はどんどん上がって、容量オーバー。
爆発寸前だ。


「………もう一回寝ろ。」

「なんで?」

「………いいからっ!」


どくどくと体の中の遺伝子が暴れている。
一向に寝る気配を見せない明久の目を左手で隠してやると、どうしても。
また、吸い寄せられてしまうのだ。


「…こう、…ん…っ」


今度は長く長く。
足りない足りないと蠢く自分の中の衝動に、よくわからない独占欲と、すこしばかりの羞恥心を感じた。
もう、どうにでもなれ。
ほしいものはほしいんだ。

自然と明久の腕が、腰に、頭に伸びてくる。
ぎゅっと抱きしめられて、急に明久の顔がみたくなって、先ほど隠した手をのけ、唇を離すと自惚れかもしれないけれど酷く幸せそうな顔をしていた。


「一緒にもうちょっと寝る?」

「………」


まだ太陽は昇り切っていないのだから、もう少し、このままで。
俺は黙って、明久の言葉に頷いた。





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