calbo










マルコの体温が誰よりも温かいことを、俺は知っている。
といえば、ただの惚気ではないかといわれるかも知れないが、まあ、所謂惚気のひとつには違いないが。
まあこれは付き合う前からそうであったから、別に惚気・・・というほどでもないと俺は思う。
冬になれば非常に寒く、マフラーを巻いても温かさを感じない。
耳を劈く冷気は耳あてからも侵入して、攻撃してくるのだ。
だからこんな寒い日にはマルコは言わば、”必需品”なのである。


「どうしたの、ジャン。」


じい、と俺が見ていたのに気付いたのか、マルコがその大きな垂れ目をくりりとさせて此方を見てきた。
俺が言わんとしていることが伝わっているのか、いないのか。
嬉々とした表情で見つめたままのマルコにとりあえずなんでもない、と返す。
そのまま目線を逸らそうとすると、マルコがその温かい手で、俺の頬を包む。
この癖になりそうな温かさは卑怯だ、とこの寒い時期には特に思う。
そしてずずいと顔を近づけてきて、マルコの無駄に長い上の睫が当たりそうになった。


「言わなきゃ分からないよ、ジャンルカ。」


そう言って微笑んでいるのにその顔は酷く何か悪いことを企んでいるに違いない顔で。
まあ昔からずっとそうしてきたわけだから、マルコも俺が何を言おうとしているかなんて、お見通しだったわけだ。
しかしなかなかにその一言はどうにもでなくて、どうしようか、と内心酷くパニック状態になっていると、吹き荒ぶ風に全身がどんどんと冷えていく。
コートなんて、あてにならない。
吐く息だってこんなにも白いし、俺は何より寒がりだった。
だから耐えられるはずもなく、見つめてくるマルコに耐えかね、結局のところ、口にしてしまう。


「マルコ、寒い。」
「うん、分かった。」


よく言えたね、とまるで小さな子をあやすように頭を撫でられ、どうにも少々不愉快ではあるが。
でもその不愉快を一瞬で払拭するほどに、マルコは温かかった。
ぎゅう、と抱きしめられると、途端に頬が熱を持つ。
それはきっと、体温が上がったとかそういうことではないけれど、まあ、うん。
けれど徐々にマルコの高い熱がじんわり、じんわりと、体を侵食していって、どうにも心地いい。
あったかい?と聞いてくるマルコに頷いてみせると、左頬のほうにいるマルコが笑った気がした。
浮かしていた顎をマルコの肩口に置く。
華奢で、発展途上で頼りない肩ではあるが、妙に安心してしまうのはきっと気のせいじゃない。
充足していく体温と、心はどうにも、見まいと目を背けようとも無謀な話で。
マルコのことがすきだ、と全身でそう思ってしまっている自分がとてつもなく誇らしくすら感じる。
なかなか素直になることは難しいけれど、やはり俺はマルコのことがこんなにも好きだった。


「ジャンの髪はさらさらだな。」


そう言って、マルコの手が俺の髪に移動する。
指で鋤かれ、余計に気持ちよくなってしまう。
目を閉じて、指の感覚をより一層感じるようにする。
何をやってるんだ、と自分で思いつつも身を委ねる自分は相当阿呆だ。
熱にほだされ、心地良くて。
そのままマルコの体に腕を回すと、溶けてしまいそうだ。


「寒い日はいいね。ジャンルカが甘えてくる。」


そういって笑うマルコに悪かったな、と返答すると、でもそんなとこが好きだよ、と言われた。
俺もだ、とは流石に言えなかった。







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菊音さんから頂きました「マルジャンでいちゃいちゃ」でした。
フリリク企画にご参加、ありがとうございました!
これからも宜しくお願い致します。




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