ふれて、さわって。










ユニフォームに着替えようと、制服のスラックスを脱いだ瞬間、おお、と隣から声が上がる。
その声の主の方を向くと、それは吹雪士郎その人で、実に興味津々と言った表情で目を輝かせて俺の体を見ていた。


「どうした?」


そう俺が吹雪に問いかけると、吹雪はいつものようにへらり、と笑って、足、足、と俺の脚を指差す。
脚が?と聞くと吹雪はカチカチだね、鍛え上げられてるね、と言った。
確かに、脚は特に鍛えていて、陸上部の頃からの癖で家に帰ってからもジョギングをしたりなど、それなりに。
無駄な肉なんて殆どなくて、俺の脚は多分、皮と筋肉で形成されていると思う。
するとふいに、吹雪の手が俺の脹脛に伸びる。
そこにぴたり、と手のひらを合わせ、そして言う。


「ねえ、風丸くん、触ってもいい?」
「・・・・・・どうぞ。」


もう触ってるじゃないか、という突っ込みは敢えて避けて、好きなようにさせる。
別に脚に触れられるだなんてどうってこともないことだし、好きなように触ってくれといった具合で。
しかしせめて、半パンだけは履かせてくれ、と言い、履かせてもらってから。つんつん、と吹雪の白い指が俺の脹脛をつつく。
実にその手つきは遠慮がない。
わあ、だのすごい、だのいちいち感嘆の声を上げる吹雪に苦笑する。


「そんなこと言ったって吹雪も脚、鍛えてるだろ。」


そういうと吹雪はそうかな?と小首を傾げる。
自身の脚をじいとみながらそれほどでもないよ、と苦笑した。
確かに俺の脚ほど、肉がないわけではないが、適度についた筋肉はそれはまあ憧れる対象には成り得るだろうと思うし、何せ、吹雪だって脚は早い。
触っていいか?と吹雪に聞くと、吹雪がどうぞ、と意図も簡単に了承するので、その脚に触れる。
やはり筋肉質で引き締まった脚は、実に綺麗で、細い。
走るのに適したように形成されていると思う。
俺の脚に感嘆する程、そこまで差があるとは思えない。
冗談抜きでそう思いながら筋肉を確かめるように手のひらで触る。
そしてその手を離してそのままを吹雪に伝えると吹雪は言う。


「脚だけじゃなくて。」


そういって吹雪の手が次に伸びてきたのは俺の腰。
両手を添えるように、軽くふわり、と手を乗せて、俺の腰に触れたのだ。
なんだかむずかゆいような、よくわからない感覚を出来るだけ我慢する。
さらりとそのまま。
その手は上へ。
腰を伝い、腹、肋骨付近を通過して、脇。
そしてそのまま腕を伝う。
手の指の先まで到達したら、今度はその手は逆流する。
肩の方に行き、最後に首を撫で上げられた。


「・・・ふ、吹雪?」
「ほら、やっぱり。線が細い。」


僕のにも触れてみなよ、と手を握られて、吹雪の腰に持っていかれる。
腰を触ってみても、特にただの適度に筋肉のついた腰だとしか思わないが、俺のそれより少しだけ、本当に少しだけ、分厚いような気もする。
吹雪はそのまま、俺の腰もう一度手を当てた。


「うん、やっぱり、風丸くん、細すぎ。」


抱きしめられたら折れちゃいそうだよ、とそういうので少しだけ、むっとする。
そもそも鍛えた脚と細い体なんて関係ないんじゃなかろうか、とすら思う。
妙にいつも異常に脈絡がなく、矛盾だらけで意味が分からない。
少し俺が不快に思ったのが表に出てしまったのか、吹雪は俺の腰に手を添えたまま、困ったように笑う。


「じゃあ試してみる?」


吹雪がそう、口を開いた。
試してみるって何を?と思ったときには既に遅くて、吹雪がそのまま腰に手を廻し、その腰を引いて、俺の体をぎゅ、とそれはそれは見事なまでに力を込めて抱きしめていたのだった。
ただでも別に、それが苦しいとか言うわけでもなく、妙に心地いいから意味が分からない。
吹雪が耳元でごめんね、と困ったように笑った。
何が、というと、吹雪が続ける。


「ただ風丸くんの体に触りたかっただけ、なんていったら怒る?」


とそう言ってのけたのだった。
細かく聞くと、脚を触っているうちに、体にも触りたくなって、何か理由をつけようとあんな脈絡のない言葉で俺の体に触れ、上手い言い回しが思いつかなくなって、白状したらしい。
道理でわけがわからんわけだ。
そして俺はただのセクハラをかまされたわけで。
そしてそれは今も続行中なわけで。


「……ほら、折れないだろ。」


そう、悔し紛れに言ってやると吹雪はどうかな、と言って笑った。
ちくしょう、と吹雪の胸を押したがびくともせず、鍛えよう…と頭の隅で決意した。





***
匿名さんから頂きました「お互いの体をさわりあいっこする吹風」でした。
フリリク企画にご参加、ありがとうございました!
これからも宜しくお願い致します。




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