ドイツが鎖国中らしい。 そんな馬鹿な、と思いつつ、頭の何処かでは納得をしていた。あの人、幽霊とか非科学的なのは苦手でしたね。何処かで聞いたような話だと零せばギルベルトと日本さんが何故かこちらをじっと見てきた。いったい何がしたかったのだろう。疑問符を浮かべる私を余所に、二人はさっさと部屋を出て行こうとしていた。まずはドイツと合流してからイタリアさんを探すことになったため、取り敢えずはここから出ないといけない。
「ようし! それじゃ行く……、」
寸暇後、はっとして剣に手を掛ける。今度こそ、今度は確実にあいつだ。本能が警戒しろとサイレンを鳴らしている。
「おい。」 「その腰のものが飾りじゃないのであれば、鞘から抜いてください。」 「喰われたくなかったらな……。」 「承知。」
こういう時ばかりは自分の戦闘民族の血が騒ぐのを否が応でも知ってしまう。フリードニアは血気盛んな軍国だった時期が少しばかりあったのだと。今や一地方として薄らと名が残っている程度の知名度で、のほほんと余生を楽しんでいると言うのに。
「早く帰って、美味いビールが飲みたい……。」
小さく呟いてから、ふつふつと湧き上がる怒りをあの化け物にぶつけようと、強く獲物を握った。
幾度もドアノブを回そうとする音が聞こえる。確かにいるのだ、あの化け物があの扉の向こう側に。波打つ心臓の音が聞こえる。二人の音だろうか。 少しして、ドアノブを回す音が途絶えた。息を飲んだままだったギルベルトが口を開く。
「……行ったか?」 「ええ、恐らくは。」
日本さんがそういうものの、私はどうしても不信感が拭えずにいた。まだ、扉の向こうの気配が動いてないように感じたからだ。
「いや、多分ですが出待ちしてますよこれ。」 「んな怖い事いうなよ……。とりあえずヴェストと合流だ。イタリアちゃん見つけて早いとこ出ようぜ。」 「そうですね。」
不安は拭えなかった。しかしこれ以上二人に何か逆らおうとは思わず、二人が言うのならばそうなのだろうと結論付けた。私より幾分か長生きをして、戦いも場数も桁違いに経験されている方々だ。信じよう。廊下に出ようとする二人の後ろに着いて、部屋を出た。
そして、死角から飛びでてきた灰色の化け物に、先手必勝と剣を降り下ろした。
シナリオ通りの道をゆく
血を流しながら化け物は数メートルほど後退した。私は半ば叫ぶように怒りを孕んだ言葉を口にした。
「やっぱり出待ちしてたじゃないですかぁ!」 「そのようですね。」 「見れば見る程こええ! これじゃ俺様の華麗な技を披露できねえ! なんとかしてくれ!」
ちゃんとしてください、そんな思いを込めた眼差しを送ってから再び近づいてきたそいつに斬りかかった。
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