イギリスさんのツンデレとやらも見れた格子戸の部屋で見つかった行方不明だった三人の方々。急いで格子戸を開けると、少しやつれた表情をした三人が嬉しそうにその中から出てきた。ドイツと一緒にいた私の所にギルベルトはやってくると、二人纏めて抱きしめて「無事でよかった。」と蚊の鳴くようなか細い声でそう言った。ドイツと顔を見合わせる。ドイツも照れているような、恥ずかしいような、嬉しいような……なんとも言えない表情を浮かべていた。皆さんの前と言う事もあって、中々この家族と会えた喜びが表に出せない。もどかしい、と想いつつこんな思いも彼が生きてなかったら思う事もなかったんだと言う事に気づく。とっても幸せなことなのだと。

「というか兄さんもなんで此処に……。」
「お前らが起きないからだろ! あの後すっげー大変だったんだからな! 生きてるのが奇跡すぎるぜ!」
「……私なんて蹴ってでも殴ってでも起こしてくださってよかったのに……。そもそも起きれないなんて不甲斐なさすぎます、ごめんなさい、ごめんなさい……。」
「やっぱり、気にしてたか。……ラナお前のせいじゃねーから気にするなよ。」
「プロイセンさん。起きた時にいらっしゃらなかったのは……まさかあれに遭遇したのでしょうか?」
「あーあれな。俺様が楽しく見張りをしている時にいきなりドアをドカドカたたく奴がいてよ。開けたらいたのがこいつ。」

 ぴらぴら、と力なくフランスさんが手を振り、笑顔を振りまく。腕に傷があったのは見間違いではないだろう。救急箱を取り出して、フランスさんに治療を施すため服を捲る。どう見ても切りつけた痕だった。

「こいつの顔傑作だったぜ。でも、いきなり斬りかかってきてお兄さんちょっと怪我しちゃったよ。」
「だーもう!! 謝ったじゃねえか! かすり傷だろあんなん!」
「ま、美人さんに治療してもらえるならいっかな。」
「フランスさん、さりげなくお尻触るの止めてください。」

 治療中なので両方とも手が使われているため、口頭での注意しかできないでいると、顔を赤くしたギルベルトがフランスさんを殴った。「怪我人になにしてるんですか!?」口から飛び出たのはお礼ではなかった。感謝してるけれどそれでも殴るのはダメだと思うのですギルベルト。

「いてて!! もうプーちゃんたら!」
「……んで、お前等四人くっついてグーグー寝てるし、二人で情報交換していたら……。いきなりあの化け物が出てきやがったんだ。戦うにも準備整ってねえし、剣も切れ味悪いし怪我するわで結構大変だったんだぜ。」
「これ終わったら怪我ちゃんと見せてくださいね。」
「おう。お前等起こすとまたややこしいし、廊下でフランスと二人で戦ってたんだけどよ分が悪いってんで、一階まで逃げたんだ。」
「したらあの化け物、いつの間にか先回りしてアメリカのこと襲ってんの。他人の振りしようろしたら、こいつ両手振って「お〜い! ここだぞ〜!!」って言いながらすっげー笑顔で寄ってきてさぁ……巻き込まれた。」
「あんなの一人で戦うなんて無理なんだぞ! 別にいいじゃないか! 三倍なら勝てるって思ったんだぞ!」
「んで、体勢整ってないのに戦えねぇってことでここまで逃げてきたんだけどよ、この中に逃げ込んだのはいいが、中からは開かなくて、仕方なくお前等を待っていたんだ。」

 ずっとこの中にいたらしい三人に状況説明をすることになったため、二手に分かれることになった。私は説明兼、治療をするために残る事にした。酷くないといっても、放置しておくわけにもいかないだろう。「じゃあ俺は日本といってくるんだぞ!」と高らかに宣言して数人の説教と説明から逃げようとしていたアメリカさんは、結局日本さんについていくらしい。最終的には探し物があると言うイギリスさんを加えた三人で行くことになった。アメリカさんは遠距離武器を使っている人なので、傷もさして見当たらない。見えるところだと小さな擦り傷が頬にあったぐらいだ。でも一応後で見なくちゃいけないなぁと思っている内に三人は出発してしまった。
 なにはともあれ、全員が無事だったこの喜びを、今は素直にかみしめよう。


ラヴェンダーの夜明け



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