まだ入っていなかった扉を通ると、そこは白黒の世界だった。モノトーンで彩られた廊下を通って正面の部屋に入る。何もない部屋には、二つ扉があるだけで、一見しただけで直ぐに部屋を出る。(一瞬、日本さんの瞳が揺れたような気がした。)
 また廊下を進み、今度は大きな机とソファの置かれた部屋に出た。これといって何も無かったが壁際を調べていたロシアさんが「ちょっと来てよー。」と皆さんを呼んだ。彼は、壁をコツコツと叩いて言う、「ここだけ音ちがうんだけど、どう思う?」

「これは……扉の音ですね。壁紙に切れ目があるので、破いてみましょうか。」
「じゃあ僕がやるよー。」

 刀に手を掛けていた日本さんを横目に素手で容易く固いはずの壁を破いていくロシアさんに少し恐怖を覚えつつ、徐々に現れてくる扉に息を飲んだ。

「私が見てきます、皆さん待っててください。」
「大丈夫ですか?」
「ええ。……直ぐ戻りますよ。」

 扉の奥は短い廊下で、その終わりに扉があった。ドアノブの鍵がガチャンと音がしたのを確認すると、慎重にドアノブを回した。



「で、扉は開かなかったあるか。」
「はい、鍵は開いたのですが……。危ない気がして戻ってきました。」
「良い判断だ。別の所を先に調べよう。」
「それじゃ、さっきの部屋のもう一つの扉いこうぜ。」

 そういうことで、あの扉のドアノブは回らなかった。何度か力ずくにガチャガチャとやってみたものの、一向に開く気がしないそれに不信感を持ったためそのまま戻ってきた次第だ。
 イギリスさんが言った部屋のドアは、直ぐに開いた。鍵も何も掛かってないことをいいことにどんどん進んでいく。行きついた先には、部屋にキツキツに詰め込まれたテーブルとイスが複数あった。それを越えた先には扉がそれぞれ向かい合う様に配置されていた。一つの扉を開けたイギリスさんが私の方をみて問う。

「空かなかった扉ってのは、これか。」
「何でこっちからだと開くんですか……。」

 内開きだったのだろうか。そんなことを考えるのもそこそこに、その他の一向はさっさともう一つの扉を開けて進んでいく。「置いてくなばかあ!」と言うイギリスさんの後ろに着いて行くと、皆さんは既に鍵を使って格子戸をあけて先に進んでいた。殿なため後ろを気にしつつ、前を意識しないまま何処かの部屋に入った。

「ラナ!」

 耳に届いたのは、昔においてきた自分の人名。
 今や、それで私のことを呼んでくれるのは、一人しか居なくなっていた。 
 間違えるはずがない、彼の声だった。

「ギルベルト!」


こえをさがして


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