同じことは、二度ある。そう言ったのは誰でしたっけ?

「またですか……!」
「日本さん腰大丈夫ですか!?」
「フリードニアくんこそ、腕の傷開いてますよね?」
「ばれてましたか。」
「逃げ切ったら、手当しましょう。」

 私たちは今、廊下を全速力で駆け抜けていた。
 鍵をとり、外に出ようとした時、扉の外で物音がした。けれど、そこしか出口は無い。覚悟を決めて外に飛び出して、今はさしずめリアル鬼ごっこ状態だ。
 流石に皆さん体力が少なくなっているようで、戦うと言う選択肢はなかった。恐らく、今から戦えばやってくるのは敗北。敗北はイコールで死に繋がる。だったら、逃げるしかない。けれど、既にこの時点で走れそうな人は少なかった。無理をしてこの鉄格子の部屋から出て行けば、脱落者も出てくるかもしれない。そう考えた私は、一つ提案を持ちかけた。
 館の中を駆け回り、図書室の中を巧みに利用してはあの化け物との距離を取る。捕まってたまるものか。まだ、私はあの人を見つけていない。確かに疲れているのに、前へ前へと足が出るのは生への執着か、あの人への執着か。どちらにしても生きなければいけない。暫くして図書室を出た時、追ってきていたあの化け物の姿はどこにもなくなっていた。
 二人の囮作戦は無事成功したようだ。
 皆さんの所にいこう、どちらからと言うわけでもなく顔を見合わせて互いに頷きあった。

 戻ってくると、既にあの時計は見つけらたあとだった。ドイツが手にしたそれは、留まることなく狂ったように時を刻みつけている。かち、かち、という小さな音ではなく聞きようによっては叫んでいるようにも聞こえた。その叫びを止めなければ、と思う反面、またあの映像が流れるのではないか? と勘ぐってしまう。次あれを見た時、私は無表情を装っていられるだろうか。

「見つけた鍵って、地下室行きだよね? 行く前に、この記憶の混乱を解決しなくちゃね。」

 どうやら、私だけじゃなかったということらしい。口にされた言葉に驚きを隠せない。けれど、それさえも私だけではないようだ。
 驚きに満ちた視線がロシアさんに突き刺さる。その中で、ドイツだけが違っていた。まるで、何も違和感がないとでも言う様に、何時ものように進行役を務める彼を見る。偽る必要性もないことなので、彼が嘘をついている可能性は実に低い。やはり、何も見ていないのだろうか?

「気のせいってことはないと思うんだが……。お前ら、時計壊して何か気付いた事がないか?」
「お前も気付いていたあるか。とすると、我の気のせいではないあるな。」
「時計を壊すと、余計な記憶が入ってくるのは皆一緒ってこと?」
「そ、そうなのか?」

 やはり、彼だけは違っているらしい。私に困ったような顔で視線を向けて来たので、私は小さく頷く。すると自分だけが違う事に、驚いていた。なんで、彼だけは違うのだろう? 何か特別なことをした覚えはないし、他の国ともなんら変わりは無いはずだ。ここで異端なのは、亡国であるのに存在している私とギルベルトだけだというのに、なんでドイツが? 悩んでいる間にも話は進んでいった。

「色んなややこしい記憶があるけどまずは、「僕たち」の始まりを思い出そうか。」


思考の海に溺れる


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