「……”シ”ですね。」 「俺に掛かってきた音は”ラ”だよ。」 「俺に掛かってきたのは”レ”だな。」 「僕が利いた音? ”ソ”だね。」
そばで聞き耳を立てていた私がそういうと、イタリアさんとイギリスさん、ロシアさんも続けて音を告げた。まとめると掛かってきたこの四つの音は、”シ、レ、ラ、ソ” 誰がどうやって掛けてきたのかも気になるけれど、今はとりあえず鍵盤に意識を移した。カラフルな数字がならんでいる。この中から四つ数字を選ぶのだろうか。その時、食い入るように鍵盤を見つめていたカナダさんがぽんっ、と手を打った。
「あ! 解かりました! たぶんこれで正解ですよ!」
にっこりと嬉しそうに笑って彼は解説を始めた。紙を片手に持って見合わせながら、数個の鍵盤を指差す。”青の4、赤の2、黄の6、緑の9”それは暗号とも合致しており、カナダさんに賞賛の言葉が送られる。”4269”か?とイギリスさんが問うと、彼は小さく頭を振った。彼は手にしていた紙を皆に見せた。黄緑赤青の順番で四角が配置されている。ここまでくると、流石に私も答えが分かった。
「6294!」 「正解です!」 「こうも当てはまると、逆に清々しいな。では、金庫へ向かうとするか。」
安全確保のために一足先に部屋をでた日本さんに続いて、皆さんがぞろぞろと列をなして外へ出て行く。また気を引き締めないといけないなと頭の隅で考えながら、私もドイツの後についていく。運がいいのか、廊下にはあの化け物はおらず、足音も気配も感じられないとりあえずこの階にはいなさそうだ。安心するのは早いが、それでも昨日のように突然戦闘を仕掛けられるよりは幾分かましだと思う。そんな事を実感するよりも前に皆で脱出したかった。 それぞれが何時でも対抗できるように武器を構え始める頃、家を出る時は決まって最後で戸締りをする役目だった私は何時もの癖でか、誰かのこっていないかと部屋の中をふい覗く。ぽつんと、一番孤独を嫌いそうな人が残っていた。
「あと、少しかぁ……。」
その呟きの正体が分かるのは、もう少し後になってからだった。
残響
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