和室に沿う様にある廊下の先には鍵の付いたドアがあった。おそらくここに間違いない、鍵を差し込むと、がちゃりと音を立ててノブが回る。そのドアをくぐった先には、また和室があった。先程は調べられなかったこちら側の和室、何かあるのかもしれない、そう考えてなるべく遠巻きにして和室に足を踏み入れたが、私はその部屋の中央に近づくにつれ、嫌な予感が膨らんでゆくのを感じていた。 音を立てて、襖が開く。館内を照らす光が、その黒々とした眼光を照らした。 ぬらり、現れたのはあいつだった。 ―――あれは……? イタリアさんとドイツが小さく叫び声をあげて、それが合図だとでもいうように全員が一目散にドアに向かって走った。隣の和室に逃げ込み、まだまだ追って来る化け物を避ける。逃げなければ、今は戦うべきではない。ぐるりと和室を一周した後、イタリアさんを筆頭に廊下へと逃げていく。先程見た部屋のわきを通った、嫌な汗が出た。 確かこの先は―――
「行き止まり……!」
ちらりと見えたドイツの顔が、青ざめていった。 しかしイタリアさんの足を止めることはできず、彼の後に着いて行く。どうする、戦えばまだ二人の退路は確保できる。しかし一人で化け物を相手になんて―――簡単に分かってしまう答えを出すことに躊躇している内に、イタリアさんがとある部屋に飛び込んだ。手洗い場のようだと言う事に気づいたのは、暫くしてからだった。どうやら、撒けたらしい。気配も完全に無い、この前のように出てくるのを待っているわけでもなさそうだ。安心して息をついている間に、イタリアさんはトイレを覗き込んでいた。どうやら、これが日本さんから聞いたコンビニエンストイレらしい。「どうもこのトイレコンビニは良くわからん。」と言うドイツの呟きに、全力で同意を示しておいた。とても解明したい。
「び、ビール……!!」 「ヴェ。二人とも嬉しそうだね。」 「ビールが買えるならいいんだ俺達は。」
「飲んじゃだめだよ?」と念を押してきた彼の言葉に、伸ばしていた手がぴたりと止まった。ですよね。
絶望の後の小さな幸福
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