”アメリカさんの友人”、そういうことに結論付けて行動しようとしていた私たちは、まさかのカナダさんの告白にただ狼狽える。
 彼がそういうのも、ちゃんとした確信があったのだ。アメリカさんを、あの化け物が襲ったと言う事実を彼は痛烈に語った。もし、あれが仮に友人だとして、アメリカさんに手を出す事なんて、ありえない。同じように、友人にアメリカさんが拳銃まで持ち出して本気で打つことなど、考えられない。つまりはあれはトニーではないのだと彼らは言いたいようだった。イギリスさんが、はっとしたように口走る。「あの銃撃音……それだったのか!」

「アメリカ一人でどうにかするつもり……だったんだと思う。でも、僕たち三人ではかなわない位強くてとりあえずアメリカから引き離そうってことにして戦ったりしたんですけど、ダメで……。一瞬の油断で、気絶してしまったんです。気が付いたら、あの生き物もアメリカも……消えてました。」
「消えて……。」

 零れた言葉は、勿論あの人を想っていたからだ。ギルベルトも消えて、アメリカさんも、フランスさんもいない。一体ここはどうなっているのだろうか、あの人たちは無事なの? 胸が痛む、気持ち悪い、いやだ……!
 ロシアさんがカナダさんにブラックジョークークを飛ばしている間、自分でも怖いぐらいに鳴る鼓動を押さえつけていた。

「あ!」とイタリアさんが不意に暖炉の方で声を上げた。瞬時に反応するドイツの方をくるりと向いたイタリアさんは暖炉を指差す。

「燃やした木箱の中、何か入ってたみたい! ちょっと待って。えっと……。」
「私がお取りします。」
「気をつけて取り出せよ。」
「はい。っと……熱っ……。」

 なんとか取り出したものは、金属製の小さな物体だった。火に入っていたためか、とても熱い。軽く火傷してしまった掌の上にあるそれを見るなりイタリアさんが叫ぶように言い放った。

「これ、鍵だ。どこかの部屋の鍵だよ!」

 鍵に掘られていた言葉は見難いものの、【廊下の鍵】と書いてある。一体だれがあんな小箱にしまっていたのだろう、それ程に閉じていたい部屋なのだろうか。そもそも、何故このタイミングでイタリアさんは暖炉なんか見るために席を立ったのだろうか。まるで、タイミングを見計らったようにさえ思えてしまう。

「新しい突破口ができたある!」
「出口を探すことが第一でしたがまずは仲間の救出を考えましょう。徹底的に調べれば、必ず見つけられます。三人とも、しぶとい方達です。きっと、どこかに……。」
「仲間かー。面白そうだね。さっきはびっくりしちゃったけど今度アレに会ったらお礼をたっくさんしないとね。」

 コルッ★ 本気なのか、限りなく本気に近い冗談なのか分からないが、ただただ恐ろしい。悪寒が背筋を走った。この部屋、寒いのですが。

 日本さんの提案によって、三つの隊に分かれることになった私たち。私はドイツとイタリアさんの隊に入ることになった。単独行動を慎む様にと促す日本さんの顔は真剣で、皆さんおされている様に見える。やはりこういう時の仕切りは、日本さんかドイツと相場が決まっているのだろうか。

「それから、」と一言おいてから静かに彼は述べる。「かみ合わない時間軸の話ですが……。」

 静まり返る部屋―――その時だった。
 ドアノブが音を立てた。
 ガチャ、ガチャ。
 静まっていた部屋には、その音は良く響く。同時に血の引いていく音が聞こえた。

「ひっ!! に、日本……。」

 怯えるイタリアさんの声とは裏腹に、分かっていたとでも言う様な表情のまま日本さんは告げる。

「……。やはり、見つかりましたか。ここはもう、安全ではありませんね……。」
「限界だったのか……くそっ。どうする!?」
「私の隊がアレを引き受けましょう。ドイツさん、イタリア君、フリードニア君。鍵の合致する部屋を探してください。」

 そう指示している間にも、アレが力まかせに扉を破ろうとしているために部屋が揺れている。細かい瓦礫の塵が落ちてきていた。

「なら我も日本と戦うある!」
「僕も一緒でいい? 折角だから、たっぷりお礼しないとね〜。」

 ロシアさんと中国さんは、既に戦える体制をとっていた。水道管がキラリと光る。

「俺はカナダと調べたい部屋があるからそこに行く。イタリア。何か進展があればピアノがあった部屋に来い。」
「分かった! き、気をつけてね? 日本。」
「ありがとうございます。」

 その台詞を待っていた、とでも言う様についに扉は破られてしまった。バラバラになった無残な姿のドアはヤツの足元に転がっていた。勢いよく日本さんへと、化け物は向かった。しかしその動作は余りに直線的で、避けることは造作も無い。

「……では皆さん……御武運を。」

 するりと化け物から逃れた日本さんは飛躍した、そして離れた場所に軽く着地したと同時に空中で抜刀していた刀で化け物を押しのけた。短い悲鳴が上がる。ドイツが小さく「忍者……。」と呟いたのは聞き流すことにした。


それぞれの結末に向けて


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