連合の方たちと合流したと言う日本さんは、戻ってくると暖炉の部屋に戻ろうと提案した。連合の方々は部屋で待っているらしい。

「え? 他の皆も来てるんだ! じゃあまた暖炉の部屋に戻ろっか!」
「はい。若干数名足りないのですが、詳しくは今から緊急会議、ということで。」

 薄らと困っている表情を浮かべながらも毅然とした態度を保つ日本さんに、私は何故か少しだけ苛立ちを覚えた。勝手な私の八つ当たりにしか過ぎない事を解かっている、分かっているんだ。ぐっと拳を握りしめ俯く私の傍に、そっとドイツが寄り添った。

「やはり兄さんは見つからなかったのか……。」
「……はい。」
「すみません、私の所為です、私の……!!」

 爪が掌に突き刺さり、血がにじむ。そんな痛み何て、なんてことなかった。そんなことより、心が痛い。痛い。

「だ、大丈夫だよ!! 元気だそうよドイツ! フリードニア! 二人がそんなんじゃプロイセンも出るに出て来れないよ!」
「そうです、フリードニア君も気に病むことではないです。貴方の所為なんて誰も思っていませんよ。」
「でも……すみません、ご迷惑をお掛けしました。」
「すまん。」

 迷惑にならないように、足を引っ張らないようにしようと決めたのに。駄目だ、悪い方向へと考えてしまっている自分がいる。頬を手で引っ叩く、ジンジンと痛みを発するが、自分に喝を入れるのには丁度良かった。
 大丈夫、あの人はこんなところで消えはしない。
 私が信じなくて、どうするの。

「行きましょう。皆さん、お待ちかねです。」



「お待たせしました。では早速ですが、私たちの現状の説明からさせていただだきます。」

 部屋の中には、既にテーブルについた連合の方々がいらっしゃった。どの方を見ても、怪我を負っている。十中八九あの化け物に遭遇したのだろう。持ってきていた救急セットの箱を取り出す、まずは一番怪我の深いロシアさんを手当することにした。中国さんなんかは勝手に中身を取り出して自分で慣れた手つきで手当をしている。

「まず私たちは、ご存じの通り中国さんがこの館に来た。と言うメールをいただきイタリア君も面白いから行ってみたいと言う事で、私とドイツさん、イタリア君、プロイセン君、フリードニア君でここに来ました。私がまず中の様子を歩いて回ったのですがその間に、先程の化け物が現れてイタリア君たちに襲いかかったんです。」
「だ、大丈夫だったのかよ。」
「うん。なんとかね。運がいいのか悪いのか逃げ足の速い俺をターゲットしたみたいでとりあえずは撒けたよ。」
「逃げ切ったあるか! すげぇあるな。」

 驚きと感心が混じった視線がイタリアさんに注がれる。何時ものヘタレっぷりからして到底想像がつかないのだろう。けどこの人、本当に逃げ足だけは人一倍なのだ。身近で見てきた私たちはさして驚いてないのがどれだけ一緒にいたのかを感じさせる。

「結局、あの正体は分からないままなんとか全員とうまく合流することができてこの部屋の鍵がある、と言う安心感からここで一夜を過ごしました。」
「一夜……。」
「や、やっぱりおかしいよ……。だって僕たち……あ、ごめんなさい。話、続けてください。」

 一夜、その単語に二人が反応した。きっと皆が変だと気が付いている。ぎゅ、包帯を巻く、これで大丈夫だろう。ロシアさんが「ありがとう。」といったので、「いいえ、どういたしまして。」と返答しておいた。少し、この方は苦手だ。

「燃やすのなくなってきたね。」
「あ、ではこの木箱燃やしましょうか。」
「そうだな。燃料になるなら燃やしてしまおう。」

 先程手に入れた木箱を懐から取り出し、暖炉の中へと放りなげる。めらめらと燃えていくそれをぼんやりと見ていた。

「見張りを置こうということになりプロイセン君が快く引き受けてくださったのですが、安心感から四人とも相当深い眠りに落ちてしまいまして……。起きてみたら……プロイセン君はいなくなっていました。廊下に血痕が落ちていたので後を辿ったのですが……途中で……。」
「辿れなくなっちゃったんだ……。」

 ロシアさんの声が、耳に届く。同時に押さえつけていたふがいなさと、不安があふれ出てきた。先程の手の傷が、何故か今になって痛む。

「日本を中心に探してみたんだけどまた誰かが書けたりするのは嫌だなって俺とドイツは待機していたんだ。フリードニアも色々探したらしいんだけど見つからなくて、戻ってきた。そしたら日本が皆と会ったってことだよね?」
「はい。私たちの経過は以上です。てっきり……アメリカさんとフランスさんもいると思ったのですが?」


Q and A.


 イギリスさんは日本さんと目を合わせながら頷いた。そして、口を開いた。


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