部屋をでてイタリアさんが見つけたと言う部屋に移動した。ドアの先には中々簡素だが暖炉もある中々過ごし易そうな部屋があった。そして、私たちは一旦ここで身体を休めることになった。鍵はかけてあるし、安全そうには見えるが、よくて一晩過ごせればといったところだろう。
 それぞれの顔を見渡す、皆疲れの色が見て取れた。そういう自分自身も、そろそろ腕が重い。先程の怪我の様子からしても、これ以上は危なさそうだ。

「いつもならビールで一杯……と行きたい所だが……。」
「ビール……そうだビールが足りない……うぐぅ……。ギルベルト、ビールください……。」
「無い。」
「う、え……。」

 絶望した! 断言されてしまった事実に打ちひしがれていると日本さんが無言で慰める様に頭を撫でてくださった。御爺ちゃん……! ドイツとギルベルトは思いっきり呆れていた。そんな中、イタリアさんが腕をさすりながら呟いた。

「俺、ちょっと寒いかも……。この家のせいかな。」
「大丈夫ですか? あ、私の上着でよかったら着ていてください。」
「ありがとうフリードニア、でも女の子に寒い思いさせる訳にはいかないからねー。」
「確かマッチを拾いましたからね。薪も一晩分ぐらいありますし、温まりましょう。」

 日本さんからマッチを預かり、てきぱきと暖炉に火をともす。この煙で誰かが気づいてくれないだろうか、上って行く煙も見つつそんなことを思う。ここから出られたりしないかと、一瞬考えるがどう見ても無理だ。サンタだって入ってこられない。

「お〜いいんじゃねーの?」
「はい。光があると大分落ち着きます。それに、今は一人ではありませんしね。」

 温かな炎が部屋を次第に暖めていく。暖炉のそばに座り込んだイタリアさんの隣に私も腰を下ろした。ドイツたちのことを茶化すように話す彼、そこに影など一つも無かった。けれどもう一度炎を見つめ直した彼の瞳は憂いに満ちているようだった。何故、そんな目をしているのか、私には分からない。ただ、少し前から感じていた違和感、それが関係しているのだろうと何処かで感じでいた。

「俺、この家調べまくったんだけど本当に出口がないんだよね。全部しまっちゃってるって言うか……酷いよ。」

 一瞬、キリッと瞳を鋭くさせた。

「そうか。やはりあの化け物に閉じ込められたと解釈するべきだな。出口がないのは厳しいが……。」
「暖炉上って煙突からとか……。」
「ケセセ、女のお前でも入れなさそうな穴にどうやって入るんだよ?」
「ですよねー。」
「早く帰りたいものです。」

 ため息交じりに日本さんが皆の本意を代弁して言った。

「新しいゲームも続々と発売が控えていますし……。」
「俺も、このままだとバスタもピッツァも食べられなくなっちゃうよぉ〜!」

 ヴェェェと子供の様にぐずるイタリアさんの頭を戸惑いつつ撫でる。もしかしてこのままだと一生ビールとブルストとジャガイモ食べれないのか? 本日二回目の絶望をその身に感じていると、はんっと鼻を鳴らすのが聞こえた。ギルベルトだ。椅子にふてぶてと足を組んで座っている様は、何処から見ても暴君にしか見えない。

「あのなぁ、そんなに出口出口って……。出口全部閉まってても、なきゃないで俺たちで作ればいいだろ。」

 あ、そうか。作ればいいのか。そんなことも気づけないとは大分冷静さを失っていたみたいだ。彼は当たり前のことを言わせるな、とでも言いたげな表情のまま話しを続ける。

「お前らも捕虜ン時は自分で作ったりしただろ? それの応用みてぇなもんだ。」
「ふふ。それはまた随分懐かしい思い出を。切腹しようとしていたあの頃が懐かしいです。」
「ドイツが頑張って抜け道作ってくれたんだよね。でも今回は俺も頑張るよ〜!」
「はいはい。では明日の予定は、抜け道を探しつつも出口を作ることも忘れないと言うことでいいな。」

 花が咲くように少しずつ、笑顔が広がっていく。まるでこれを待っていたようにギルベルトはまた何時ものように少し笑った。凄い人だな、と改めて感じる。同時にこの人についてきてよかったとも思う。早く、相応しくなりたい。


心の休息


 傍に居ても邪魔にならないような、そんな風に。


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