ライオコット島に来てから、本当にサッカーしかしていない。 練習が終わると、春奈達が用意してくれた夕食を食べて、風呂に入って、寝る。 今日もそれのくりかえしだった。 しかしまったく不満はない。 そのことに、鬼道は我ながら笑ってしまった。 ――俺もあいつらと同じ、サッカー馬鹿ということだな。 そう思った鬼道は、布団の上で頬が緩ませ、そのままぱたんとシーツに倒れ込んだ。 少しだけ開けておいた窓から虫の声と、かすかに他のチームメイトの声がする。 カードゲームでもしているのか、歓声や落胆の声が聞こえている。 それを感じながら寝転がっていると、まぶたが重くなってくる。 だが、疲れに疲れた体はいまいちうまく眠りに入ってはいけなかった。 鬼道はふと目を開いた。なぜか、不動のことを思い出す。 韓国戦、イタリアオルフェウスの試合を経て不動の態度は軟化してきていた。 最初は食事にも姿を現さなかった不動だったが、今は時間になると姿を現すようになった。 相変わらず基礎練習には参加していないものの、紅白戦では十分すぎる能力を見せる。 たまに鬼道がサッカーについて話しかけると期待以上の答えを返してくる。 そんなふうなことがいろいろとあって、鬼道のほうも不動のことを認めていた。 そういえば、今日は不動がめずらしく風呂にいた。 ふと鬼道はまぶたをを開き、数時間前のことを思い出す。 個人主義を徹底する不動は、風呂の時間も皆に鉢合わせないようにしているらしい。 いつもは合宿所の共同風呂が混む時間帯には絶対に姿を見かけなかった。 しかし今日は鬼道や円堂たちが連れだって風呂に行くと、先に不動が体を洗っていた。 円堂が「不動、先に来てたんだな!」と言うと、不動は黙ってシャワーヘッドを傾ける。 ちらりと視線をよこして、湯船に向かう。 てっきり出て行くかと思いきや、そのまま大人しく湯につかっている不動に鬼道は驚いた。 円堂ははなから返事を期待していなかったようで、ニコニコしながら自分も頭を洗い始めた。 そのときのことを思い出して鬼道は少し体温が上がった気がした。 やばい。 近頃鬼道は、不動のことを考えると興奮する自分を自覚しはじめていた。 はぁ、と鬼道は熱いため息をつく。 寝間着代わりのハーフパンツの中に、手を忍ばせた。 「っ……」 すでにそこは熱をもっていて、触るとさらに血の集まる感覚があった。 もぞもぞと膝を立て、もう一方の手も滑り込ませる。 目を閉じて、さっきの不動の姿を思い浮かべる。 湯にけぶる肌がほんのりと上気していて、色の白さをきわだたせていた。 いつも綺麗にセットされている髪は濡れて、まるい額に束になって張り付く。 妄想の中で鬼道は、その不動の肩をぐっとつかんでいた。 滑らかな背中を視線で堪能しながら、後ろからがっつくように攻める。 脳内の不動は最初は抵抗するが、それもだんだんと大人しくなり、………… そこで、トントンと部屋の扉がノックされた。 鬼道の頭が真っ白になる。 瞬間身を起こした鬼道が焦った声を上げ、制止しようとした。 「だ、…!」 しかしストップ!と言う前に、ドアノブが回されてしまう。 「鬼道くん、いる……」 少しだけ開いたドアから顔をのぞかせたのは、今まさしく鬼道の脳内で好き勝手されていた、不動本人だった。 ベッドの上の鬼道と目が合い、首をかしげる不動。 鬼道はパンツの中に手をつっこんだままで硬直している。 あきらかに思春期男子としてはきまずい場面だ。 だが、なぜか不動は不思議な顔をしながらも、部屋の中に体を滑り込ませてきた。 「鬼道くん?」 驚きと気まずさに口をぱくぱくさせて何か言おうとする鬼道に近寄ってくる。 すでに鬼道の手は濡れている。 出すのもハズカシイ。だがこの体勢のままいるのもありえないだろう。 チームメイトの自慰に出くわしてなぜ平然とその場に居られるのだ! 鬼道は内心頭をかかえた。 そこで鬼道は不動が何かプリントの束を手に持っていることに気付いた。 不動がその資料に目を落として言う。 「な、次の相手チームのハナシなんだけどよ、」 言いながら、鬼道のベッドへ腰を下ろす。 「久遠カントクが鬼道くんと話せって言うから……」 とそこまで言った時に、不動はプリントから顔を上げ、鬼道と目を合わせてきた。 狭いベッドの上でその距離は一メートルもない。 不動の視線が、鬼道の下半身に向く。 不動は言葉を切り、眉をひそめて鬼道のそこをじっと見つめた。 羞恥プレイ以外のなにものでもなかった。 「わ、わかったらはやく…!」 出て行ってくれ!と真っ赤になった鬼道が言おうとすると、不動の言葉がそれを遮った。 「鬼道くん、なにそれ?」 続く 二万ヒットフリリクでぽてちさんから「キスもしたことがない純情不動を鬼道が襲っちゃう話」です 長くなったので分けさせていただきました 続きは早めにアップできると思います |