14歳鬼道と24歳不動side




朝食をあらかた食べてしまうと、不動は再びベッドに寝転がる。
鬼道はいまいち尻の座りが悪かった。
目の前の不動が来たのも突然だったのもある。
しかし何より気になるのが未来の自分が不動とどういう関係なのかということだった。
ものすごく気になるが、正直怖くもある。もしとっくに二人が別れていたりしたら
……鬼道は胃がきりきりと痛むような気がした。

「鬼道ちゃん」
そう呼ばれて鬼道はハッと顔を上げた。
「眉間のシワすげーよ」
ホントに昔から変わってねーなあと笑う。
その言葉をとらえて、思わず鬼道は勢い込んだ。
「いま、でも交流がある、んですかっ」
一応不動とはいえ24歳なのだから年上だ。
鬼道ははきまじめにも敬語になった。
必死な鬼道を見て、ん、と不動は目をそらした。
何か考えついたようににやーっと笑って、鬼道の肩を抱いた。
大人の腕で肩から腰までしっかりとホールドされる。
「ナ・イ・ショ」
耳元でささやかれて鬼道は真っ赤になった。

「それよりさぁー過去のオレとはもう寝た?あ、鬼道ちゃんにとっては今か」
「ハ……」
「ア、一緒のベッドで寝てたんだし当然ヤッてるわな」
自分の質問に自分で答えてけらけらと笑う。ますます鬼道はうろたえた。

「ナッマイキだよな〜」
「え、まあ……」
「あんま攻めさせてもらえないだろ?」
そういう所も好きとは本人を目の前にして言えず、鬼道はからかわれ続けた。
未来の不動はかなり社交的になっているようだ。
間近で見た不動は、柔らかそうだった頬がスマートなラインを描いて、当然とはいえかなり大人っぽい。
つり目はそのままなぶん、少し神経質そうな顔立ちになっていた。
しかし今の不動よりもよく笑う。
きゅっと目を細める笑い方は変わっていなかった。

知らず見とれていた鬼道は、不意打ちのように近づいてきた不動の唇をちゅっと口で受けてしまった。
えっ、と目をぱちくりさせた鬼道に不動が笑う。
「だから、教えてやるよ、実地で」


もう一度、今度は深く口づけられる。
そこで鬼道は不動が教えるといったのがベッドテクニックだということに気付いた。
目を開けたままだった鬼道は不動のまつげがぼやけて見えた。
もともと少し開いていた口に、少しだけ舌が入りこんでくる。
息継ぎで緩んだ瞬間に、するりと奥に伸ばされ歯列をなぞられる。
鬼道がおずおずと舌をのばすと、不動が薄目を開けて微笑んだ。
不動の動きをまねしてみる。舌を絡めると、不動もそれに答える。
しかし鬼道が追うと逃げるように、口を離された。

「もっかい」
さっきの物足りなさに鬼道はついがっついてしまうが、不動のほうは余裕で、気持ちよさそうにしている。
くしゃ、とドレッドを押しつぶすようにして生え際のあたりをさすられる。
それがへんに心地よく鬼道はとろんとしてしまった。

「あ、」
「え、?」
アハハと不動が笑う。
鬼道が夢中になっているうちに、不動は鬼道のシャツをたくしあげていた。
ばれたか。と言いながら不動は鬼道の乳首を軽くつまんだ。
もう一つの手も鬼道の下着の中に忍び込み、会陰を強く押した。

「…〜っ!」「ここも気持ちイイだろ?」
そう言いながらも体を撫で回す手の動きに、鬼道が声をかみ殺す。
不動の余裕ぶりに、まさか自分を受け身側にしようというのでは……と鬼道は身を引きかけた。
不動がぱっと手を放し、鬼道の顔を見て不動が吹き出す。

「安心しろよ!挿れるつもりはねえって」
「……ほんとうに?」
鬼道は思い切り警戒状態だ。
「ん〜オレは挿れてもいいけど」
「嫌だ」
鬼道が即答すると、不動が吹き出す。
いいこいいこするように頭を撫でられた。
不動の笑っている顔からはあまりその意図がわからない。
にこにこという擬音がぴったりのその表情はあまり今の不動は見せないものだった。
鬼道がぼうっとその顔を見つめていると、不動は鬼道から体を離し立ち上がった。
ベッドから跳ね降りる。

「水もらっていい?」
人いる?とドアを指さす。
メイドは帰ったが、いつ人が来るとも知れない。
あきらかに部屋着の不動を万が一誰かに見られても困る。
鬼道は慌てて言った。
「あ、俺が」
「アリガトー」

すれ違うときに髪をぽんぽんと撫でられた。
また、と不思議に思って鬼道が不動を見上げると、「あ〜ゴメン」と不動が謝ってきた。
「ちっちゃい鬼道くんがカワイイからさーつい」
褒められるのは嬉しいが、可愛いというのは喜んでいいのか。
というか十年後の自分は可愛くないのか。
鬼道が少しだけ眉根を寄せると不動は目を細めた。
「心配しなくても鬼道くんはカッコイイよ」
見透かされたように言われて、その言葉の内容にも鬼道は顔を赤くした。
完全にからかわれている。
14歳の不動もかなり聡いほうだが、この不動にはかなわないと思った。
「今もねえ」
「?」
鬼道はドアを開けて、背中でその声を聞いた。
意味が分からず首をかしげたが、聞き返す前にぱたんと扉が閉まった。


キッチンで水を注いでいる途中、その言葉が『格好いい』にかかっていたのだとやっと気付く。
あの不動と同い年の自分へ。
鬼道はもう一度そのときの声色を反芻して、叫びそうになった。






番外End.




コメントでこっちの鬼道&不動も見たいと言ってくださった方がおられたのが嬉しかったです