久方ぶりの、帝国学園だった。
臨時に閉鎖され、だれともすれ違わない。
鬼道は帝国の制服を着ている。
これなら、万が一警備員に見つかっても生徒だと騙せるだろうとの考えからだ。
巨大な校舎の中で、鬼道の足音だけが廊下に反響していた。



影山の使っていた部屋。鬼道も以前はよく足を踏み入れていた。
鬼道が扉を開ける。
室内には書類があちこちにまき散らされていて、以前とはまったく様相が違っていた。
電気は付いていない。
代わりに誰もいないフィールドを映した巨大なモニタが青白い光を放っていた。
中央に大きな机が据え置かれ、そこに置かれた椅子に誰かが座っているのに鬼道は気付いた。
部屋のドアを後ろ手に閉める。
くるりと椅子が回転し、見知らぬ少年がこちらを向いた。

鬼道はこの部屋に誰かがいることを、開ける前から分かっていた気がした。





「誰?」
薄暗い部屋の中で、少年が言う。彼も帝国の制服を着ていた。
「知っているだろう」
「鬼道有人だ」
「その通り」
鬼道はそう言いながら、歩を進めた。
「お前は?」
「不動明王」
不動はゆったりと椅子に腰掛けたまま言った。
鬼道が近づいても、不動が逃げる気配はない。二人の距離は縮まっていく。

「では、不動。影山は逃げたことは知っているな?」
「センセイが捕まることなんてないさ」
ふふふと不動は含み笑いをする。影山の新しい子飼い。
鬼道は椅子の背もたれに手かけた。
「お前は影山の、新しい作品か?」
「作品?……ああ、まあ、そうだ」
鬼道がそう言うと、不動は片眉を上げて怪訝そうな顔をした。
しかし少し考えた末、それを肯定する。

バシッ。

その答えを聞いた瞬間、部屋の中に余韻が残るほど、鬼道は不動の頬を張った。
不動が信じられない、というように目を見開き、顔に手を当てる。
「……」
バシン。もう一度鬼道の手が翻った。
今度は反対の頬を打つ。
鬼道は相手の胸ぐらをつかみ上げた。
そのままそばの机に引き倒す。
がつんという衝撃が鬼道の手にも伝わった。机の上にも散らばっていた書類が、ばさばさと音を立てて床に散る。体を思い切り打ち
つけた不動が、苦痛の声を漏らした。
酷く痛むのか、肩を押さえて起き上がらない。

「センセイの最高傑作なんだろ」
アンタも、と顔を隠したまま不動は言外に言う。
不動は懲りない。
鬼道は不動にのしかかり、不動の首に両手をあてた。
「……俺は影山に復讐する」
「オレもその内に入ってるワケ?」
余裕があるわけではないが、怯えているわけでもない。
鬼道が指先で細い首を締め上げると、不動は咳き込んだ。
このまま殺してしまうかもしれない。
静かだが、確かな衝動があった。
だが、鬼道はそこで力を緩めた。

「お前も影山の一部だ」
「……そおなのかねえ」
不動がふと真顔になって鬼道から目を離し、天井を見上げる。
その目が存外に澄んでいて、鬼道はなぜか首筋が総毛立つのを感じた。






服を脱げ、と命令すると、のろのろと不動は机から起き上がり、抵抗することなく従った。
無表情で、ぱさりぱさりと服の落ちる音だけが耳に届く。
さらけだされた肌は青白く照らされていた。
不動が言った。
「変態だ」
鬼道は無言で取り合わなかった。

「さっさとやっちゃえば」
つまらなそうに不動は言う。
敵対している鬼道に、一方的に蹂躙されようとしている。
それは不動にとってかなりまずい状況だろうに、まったく抵抗する様子もないし、それ以前に顔色すら変えない。
まともな人間の態度とは思えない。
鬼道は自分を棚に上げてそう思った。
それが、ブラフなのかもともとなのか、鬼道にはまだわからなかった。
喉もとから人差し指で胸元までをなぞった。
鬼道が気まぐれに胸の飾りを指で弄ぶと、不動が喉を鳴らす。
「くう……」
「これだけで感じるのか?」
不動のそこを見ると既に少し勃ってきていた。
返事はないかわりに、不動は辛そうな顔をした。
変態はどっちだ。
そういう鬼道も息苦しさを感じて、完璧に着付けていた制服の襟元を少しくつろげた。

淡い色の乳首をきゅうっとつねってやると、不動は胸を反らしてあえぐ。
手に押しつけるようなその動きに、鬼道は初めて笑った。
もう一方にも爪を立てると、赤く充血していかにも隠微な色になった。


鬼道が机の引き出しをさぐると、すぐに目的のものに手が当たった。
鬼道は教鞭をとりだす。
影山が昔よく使っていた。
簡単な問題が答えられなかったり、悪さをする生徒は手の平を上に向けさせられて、これで軽く打たれた。
教鞭は古びていたが、弾力は十分にあり、綺麗にされていた。
自分の手で試しうちをすると、パシンといい音が鳴って、ジンと手がしびれた。

「脚を開け」
鬼道がそう言うと、不動は大人しく机に乗り上げた。
片足を机の端にかけて、鬼道の言うとおりにする。
不動の性器は完全に立ち上がっていた。
開いた内ももは血管が透けるほど白い。
そこを鬼道は容赦なく打った。

「あうッ!」
不動がのけぞる。
「両方ともだ」
不動の机についた腕が震える。
鬼道は無意識に口角をつり上げた。
不動が素の態度を見せるたび、それが鬼道の快感になっていた。
健気にも不動はもう一方の足も机に乗せた。
しかし、完全に急所をさらけだす格好がさすがに堪えたのか、鬼道から顔を背ける。

「自分で慣らせ」
ピシッと教鞭で不動の顎を軽く打つ。
さすがに顔付近は怖いのか不動の体が跳ねた。
それがまた鬼道を楽しませた。
鬼道は不動の顔をむりやり自分のほうへ向かせる。
不動は今にもつばを吐きそうな表情をしていた。
だが鬼道の視線をとらえると、またその顔はすぐに諦観の色を浮かべる。
鬼道は不動の嫌がる顔をもっと見ていたいと思った。
不動の動き、表情、肢体はすべてアンバランスで、そこがたまらなく鬼道を興奮させる。
これを思うとおりに動かすことができたら、最高の気分になるだろう。
不動は自分で舐めて濡らした指を、まとめて二本挿入した。

「ふっ、くはぁっ、 ん……」
慣れたような態度を取っているくせに、飲み込むたびに、苦しそうな声を出す。
鬼道は焦れてきて、ついに自分から手を出した。
もちろん鬼道の乾いた指は動かすたび内壁が引きつる感覚があった。

「ア、ッア、いたぁ 痛いいッ!」
初めて不動がまともに感情のある言葉を発した。
鬼道のものもかなりかたくなってきていた。
すでにスラックスの中は窮屈で、その不動の声を聞くだけで鬼道は射精してしまいそうだった。
精神的充足は時により肉体的なそれに勝る。
鬼道はめちゃくちゃに指を動かした。
粘膜の抵抗はもうほとんどない。
乱暴な動きすら感じてしまうのか、不動の膝がガクガクと震える。
こいつ、筋金入りのマゾだな。鬼道は確信した。
ひどくされるのが好みなのだ。
無意識か意識的かわからないが、不動の目は絶えず相手を誘っている。
特に鬼道のような趣味を持つ男は、いちころだろう。
内股に手を這わせ、先ほど赤くみみず腫れができたところを重ねて爪でひっかいてやる。
不動は痛みと快感で、思いっきり体をのけぞらせた。


「イッ、アアアッ、あっ……!」
そのまま責め続けると、ぱたぱたと机にも椅子にも不動の精液が散った。
がくりと不動がうなだれる。
鬼道は不動を机から引きずり落とした。
鬼道は床に寝転がっている不動を見下ろして、
「早すぎる。俺より先にイかれるとつまらん」
それだけ言った。
「あは、は、はお前、そっくりだよ。センセイの、言い方にそっくりだ」
不動が笑った。
これ以上ないマゾヒストのくせに、不動は人の煽り方を知っていた。
それだけで鬼道はカッとなって、不動を机へ蹴り飛ばした。
ふらついた不動が、がたん、と角に頭をぶつける。
それで、額が切れたらしい。
たらりとまぶたの上から血が流れた。
不動は手の甲で血をぬぐう。
それからいやらしい笑みを浮かべ、見せつけるようにそれを舐め上げた。


笑い続ける不動を鬼道は何度も革靴で蹴り倒した。
腹を思いっきり蹴ると、ついに不動は失神したようで、ぐったりとして起きてこなくなった。
鬼道はつまらないなと思いながらも、ジッパーを下げた。
両足を持ち上げて、がばりと開く。
抵抗はない。
一気に突きこむ。
ちゃんと慣らされていたそこは暖かく鬼道を包み込んだ。

「……あ…っあ、ぁ、 ぁ…、」
鬼道がゆさぶると声は勝手に漏れた。しばらくして、不動が薄く目を開いた。
だが目を覚ましたのではないらしい。
ぼんやりと不動の視線がさまよう。
「起きろ」
「…あっ、!い、ああああッ!!」
鬼道は不動の萎えたペニスをきつく握った。
不動が目を見開いて叫ぶ。
目に光が戻った。鬼道はにやりと笑う。
人形ではおもしろくないのだ。


鬼道はまた不動を立たせると、机に手をつかせた。いわゆる立ちバックの体勢でもう一度挿入する。
さきほど強くぶつけた肩は、内出血していて、大きなあざになっていた。
鬼道はそこを強く噛んでやる。
不動がもがき、呻いた。
それでも不動のそこは先走りまでたらしていて、それが好きなのがばればれだった。
もっと。もっと泣かせてみたい。
鬼道は獲物を捕らえる獣のように、不動が大人しくなるまで押さえつけ続けた。


抜き差しするたびに、不動の腰も揺れる。
汗だか精液だか、涙だかわからないものが絨毯に落ちてはしみこむ。
「不動」
「はあっ、あっ、はっ、……」
ほとんどトびかけの不動は名前を呼ぶと、また意識を取り戻す。
損な体質をしていた。この体つきではそう体力もないだろうに。
ずっとイカされ続けても、堕ちることができない。

「くう、アアッ、はああっ、あッ、!」
苦痛を与えると、不動の中はよく締まった。だがもう瞳は虚ろだ。
一応意識はあるらしいが、さきほどのようなそそる視線を返してくることはなかった。
しかしそれを抜きにしても、不動とのセックスはなかなかに良かった。
やせた背中を何回もぶつと、鬼道の支配欲は久しぶりに満たされた。


不動が動かなくなってからは、何度も体勢を変えて、鬼道は不動を刺し貫いた。
不動の体に蹴ったり殴ったりした跡がだんだん浮き出てきたのを見たときは、鬼道は興奮のあまり吠えそうだった。
不動を机の上で仰向けに寝かせ、自らも乗り上げて正常位の体勢にする。
そこで鬼道はふと不動のまぶたの傷に目がいった。
閉じたまぶたや、こめかみに固まった血に舌を這わせ、舐めた。
乾いた血は舌の上でじゃりじゃりと音を立てる。
満足できなかった鬼道は傷口をひっかく。
新しい赤い血が流れでて、鬼道はそれをちゅうと音を立てて吸った。



鬼道は何回目かの射精を終えると一応満足して、身支度を来たときのように整えた。
寝転がっている不動は目を開けたまま、放心していた。
下半身は鬼道と不動のものが混ざってドロドロで、体中いたるところに醜い傷がついていた。
「は……、ぁう………」
開いたままの後孔は不動の呼吸にあわせて鬼道の放ったものを垂れ流す。
不動が小さく息を漏らした。
鬼道はそこである気まぐれを起こした。
太ももをしどけなく開かせ、内股のきわどいところを思い切り爪を立てつねる。
ピクリと不動が反射で跳ねた。
鬼道はそれを繰り返し、終わると、もう用はないとばかりに部屋を出て行った。


結局鬼道は不動を思い通りにすることはできなかった。
不動はほとんど感情を露わにすることもなかったし、思考も読めはしなかった。
不動から見た鬼道もそうだっただろう。
影山のために動いているにしては、不動は不毛なことを受け入れすぎていた。
体だけはすぐぐずぐずに蕩けて、されるがままになったが、それは本当の意味で不動を好きにしたわけではないのだ。
不動は影山に従っているはずなのに、鬼道の言うことも素直に聞いた。
どちらがどういう立ち位置だということは不動には関係ないらしかった。
不動は虐げられる事に慣れていた。
きっと影山も不動に手を出している。
しかし、飼い主である影山すら、不動を思うままに動かすことはできないだろう。
影山はいつか必ずそんな不動を捨てる。
鬼道はそう思った。



「ほんとに、うり二つだ」
残された不動はまぶたを閉じ、誰に聞かせるでもなく言う。
「…………」
鬼道の足音がまったく聞こえなくなると、不動は身を起こした。
先ほどいじられた脚のつけねを見やる。
そこには小さな内出血が、まるでキスマークのように浮かび上がっていた。






End.




一万ヒットフリーリクエスト
まちこさんから「鬼不18禁 鬼畜な鬼道」でした!