「捨て猫人生でも歩もうとしてたの?」 「ハハ、それもいいな…じゃなくて、ごめん話聞いてくれる?」 「うんだから聞いてるじゃん」 「………。俺、帰るところなくってさ、流石にどっか住居見つけねェとやべーなぁって思って」 「それで何で我が家なんですか」 「いやあん時は半分瀕死状態って言ってもいいぐらいで…」 「要は適当、偶然行き着いたのがこの家と」
食後のお茶をすすり、改めてサンジを見る。 慣れた手つきで食器を片付けながら、言い訳という名の説明を語る彼。 気のせいか目をそらしているような気がする。それに冷や汗も見える、ような気がする。
「ダウト!!」 「?!」 「ダウトダウト!そんなのが勝手に家に入ってキッチン使った理由になるとでも…」 「俺を家にあげてくれたのは誰かな」 「……でも、キッチンまでは使わせ…」 「空腹でいきなり倒れたのは誰かな」 「………」
反論できずにうつむいているなまえの湯のみにおかわりのお茶を注ぐサンジ。 じんわり温かくなった湯のみが自然となまえの心を落ち着かせていく。
「…ご要件はなんでしょう」 「俺をここに住まわせてください」
「突飛な発言だって重々承知の上で言うよ。俺は住居がほしい。もうなりふりかまってられないんだ。頼む、ここに住まわせてください」
失礼も失礼、冗談もいいところだと全て分かった上でサンジはなまえに言った。 こんなことを言われて「はいそうですか」と承諾する人なんているわけがない。NOという返事が返ってくるのを待ったが、なまえの答えは、
「いいっすよ。」
「………パードゥン?」 「だから、YES」 「え、君ご両親にも何も言って…」 「それはいいんです」 「え」
またお茶を一口飲み、なまえは口を開いた。
「うち、親いないんで」
「……ごめん」 「?何でサンジさんが謝るんですか」 「いや…」
やべェ。こういう時何て言ったらいいんだ。 レディの扱いに関しては世界で一番自信があるのに…! それでも、目の前でお茶をすするなまえに、何も言えなかった。
「サンジさん、私がいいよって言わないって思ってたでしょ」 「あ、ああ…そりゃあ、もちろん」 「でも住み込む気満々だったじゃん。キッチン使ってご飯までつくって」 「あれは、雨の中俺を家の中に入れてくれたお礼のつもりで…」
言い訳に聞こえるが、全部真実だ。 あくまでこれはお礼だったこと、願いはダメもとだったこと…
「じゃあ俺からも聞いていいかな。何で承諾してくれたんだい?」 「サンジさんのご飯がめちゃくちゃ美味しいから!!」 「…………。」
こうして、2人の同居生活はスタートした。
(俺、もしかして最高にツイてる男?)
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